本年(2015年)4月、第79回日本循環器学会学術集会でのセッション「iPSを用いた再生医療」では、循環器領域におけるiPS細胞による再生医療の取り組みが紹介された。その中で、大阪大学 大学院医学系研究科 宮川 繁氏が同大学におけるiPS由来心筋細胞シート治療の現状を紹介した。
大阪大学では、すでに重症心不全に対する自己骨格筋芽細胞シート治療を開発している。同治療はこれまでに、人工心臓装着・未装着患者数十例に行われており、テルモ株式会社が虚血性心疾患による重症心不全を対象とした同細胞シートの製造販売承認を申請中である。
しかし、骨格筋芽細胞シートでも効果を得られないケースは存在する。心筋細胞欠如例などが一例であるが、そのような場合は、外部からの心筋細胞の補充が必要となる。これがiPS細胞由来心筋細胞シート移植の対象となる。
宮川氏らは、iPS細胞から心筋細胞への分化誘導、シート状への加工に成功しており、その有効性も動物実験で確認されている。iPS細胞由来心筋細胞シートは筋芽細胞シートと比較し、左室全体の収縮率、左室壁応力、移植局所の収縮能など有効性が高いことが示されている。
大阪大学では、iPS由来心筋細胞シートの臨床応用への取り組みとして、同細胞や未分化細胞に特異的に発現するいくつかの表面抗原を活用した、未分化細胞除去および心筋細胞の純化方法を開発している。現在、京都大学iPS研究所(CiRA)から臨床グレードのiPS細胞の提供を受け、その分化誘導効率および安全性を検証中。検証完了後、臨床研究が開始されるが、その時期は遠くないようである。
(ケアネット 細田 雅之)