4月21日、東京都内において「梅雨から要注意!カビが引き起こす感染症・アレルギー -最新の研究成果から導く“梅雨カビ”の対策ポイント-」(主催:株式会社衛生微生物研究センター、協力:ライオン株式会社)と題し、メディアセミナーが開催された。
これから梅雨の季節を迎え、家中のさまざまなところで発生するカビについて、その性質と健康に及ぼす影響を概説し、具体的にどのような疾患を生じさせるかをテーマに講演が行われた。
カビを吸い込むことで喘息やアレルギー性疾患を誘発
はじめに「カビ」の研究者である李 憲俊氏(衛生微生物研究センター所長)が、「身の回りのカビと、人体への影響」と題して、家カビの発生とその影響について解説を行った。
カビは、水の溜まるシンク周りや浴室に多く繁殖し、また、湿気のこもる下駄箱、押し入れ、結露する北側の壁、窓枠、浴室天井などに多く発生する。とくに天井のカビは、思いのほか気が付きにくく、掃除も難しい。また、胞子が舞い落ちることで人が吸い込む可能性もある。そして、カビを吸い込むことで、喘息、アレルギー性疾患を誘発、悪化させるほか、肺炎などの感染症の原因ともなる。李氏は「現在のように密封性の高い家屋では、カビの増殖が容易なため、いかにカビを発生させないか対策が大事」とまとめた。
原因不明の咳はカビによるアレルギー性疾患の疑い
続いて、「カビが引き起こす感染症・アレルギー」と題して、亀井 克彦氏(千葉大学真菌医学研究センター 臨床感染症分野 教授)が、カビ(真菌)が原因となる呼吸器疾患のレクチャーを行った。
真菌が原因となる病気は、水虫が広く知られているが、その他にも感染症、アレルギー、(食物摂取による)中毒症などがある。そして、私たちは1日に1万個以上の真菌を吸い込んでおり、真菌が原因の疾患で亡くなる方も現在増加中だという。
原因不明の咳などの診療でのポイントとしては、「古い木造一戸建てに引っ越した」「梅雨ごろから症状が始まった」「しつこい乾いた咳」「家の外だと軽快」「次第に息切れする」「中年女性」といったファクターがあった場合、「夏型過敏性肺臓炎」や「カビによるアレルギー性疾患」などが疑われ、早期の検査と治療が必要となる。とくに「夏型過敏性肺臓炎」は、わが国独特の疾患であり、風邪などと区別がつきにくいために見過ごされ、治療が遅れることも散見されるので、注意が肝要とのことである。
また、頻度は少ないが、喫煙者や糖尿病などの慢性疾患を持つ人が罹りやすい「慢性壊死性肺アスペスギルス症」などは治療薬も効果が弱く、進行すると予後不良となるため、定期健診での早期発見が大切だという。
真菌感染症は、容易に感染しないものが多いが、一度感染すると難治性となり、治療薬も効果が弱く副作用も強い。また、再発しやすく、アレルギーなどのさまざまな疾患の原因ともなるので、原因不明の咳などで「前述の疾患を疑ったら呼吸器科の中でもアレルギー疾患領域に明るい専門医の受診が必要」とのことだった。
最後に、患者に指導できる予防策として、肺の老化予防のために「禁煙の実施」、住宅内の「カビの排除」(とくにエアコン、水まわりなど)、原因不明のしつこい咳や息苦しさがあれば「専門医師への受診」を患者に伝えることが重要だと亀井氏は述べ、「カビについて過度に神経質になる必要はないが、適度な心配はしてほしいと患者に指導をお願いしたい」とレクチャーを終えた。
(ケアネット 稲川 進)