アリピプラゾール、脳卒中後の抑うつに対するメカニズム

提供元:ケアネット

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公開日:2015/05/08

 

 虚血性脳卒中後、うつ病を発症することは少なくない。虚血性脳卒中の発作後、慢性弱ストレス(chronic mild stress:CMS)が加わることにより抑うつに進展するか否かに関し、韓国・釜山大学校のYu Ri Kim氏らは、マウスを用いて検討を行った。その結果、発作後のCMSにより生じるドパミン作動性ニューロン損傷や海馬におけるニューロン新生低下をアリピプラゾールが回復させ、抗うつ作用を発揮する可能性を示唆した。Behavioural Brain Research誌2015年7月号の掲載報告。

 マウスを用い、CMS、左中大脳動脈閉塞(MCAO)、MCAO後のCMS(MCAO+CMS)の各種条件下におけるうつ障害を、行動学的および病理組織学的分析により評価した。抑うつスクリーニングテストとしてオープンフィールドテスト、スクロース嗜好性試験、強制水泳試験、モリス水迷路試験を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・MCAO+CMSマウスはMCAOマウスに比べ、有意な抑うつ行動を示した。
・MCAO+CMSマウスはCMSマウスに比べ、強制水泳試験およびモリス水迷路試験において明らかな障害を示した。
・病理組織学的分析において、MCAO治療マウスはCMSマウスに比べ、線条体と中脳に顕著な萎縮性変化が認められた。
・MCAO+CMSマウスはCMSあるいはMCAO単独治療マウスに比べ、中脳におけるドパミン作動性ニューロンの損傷と線条体および海馬における神経細胞の増殖および分化の減少が顕著に認められた。
・MCAO+CMSマウスをアリピプラゾールで治療したところ、評価したすべての抑うつ行動が減少し、とくにモリス水迷路テストにおいてその効果がみられた。
・中脳におけるドパミン作動性ニューロンの損傷回復および海馬におけるニューロン新生の増強も示された。

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(ケアネット)