うつ病と低学歴の関連には、遺伝的多面発現効果(pleiotropy)の影響は認められないが、社会経済的状況などの環境因子が関わっている可能性が示唆された。Major Depressive Disorder Working Group of the Psychiatric GWAS ConsortiumのW J Peyrot氏らがドイツ人、エストニア人のうつ病患者のデータを解析し報告した。Molecular Psychiatry誌2015年6月号の掲載報告。
低学歴とうつ病リスク増加との関連は、西欧諸国において確認されている。研究グループは、この関連に遺伝的pleiotropyが寄与しているか否かを検討した。ドイツ人およびエストニア人のデータを加えたPsychiatric Genomics Consortiumから、うつ病9,662例と対照1万4,949例(生涯にわたりうつ病の診断歴なし)のデータを解析した。
主な結果は以下のとおり。
・1万5,138例において、低学歴とうつ病の関連をロジスティック回帰により評価したところ、有意な負の関連が示された。
・低学歴のうつ病に対する標準偏差(SD)増加当たりのオッズ比は、0.78(0.75~0.82)であった。
・常染色体性の主な一塩基多型(SNP)88万4,105件のデータを用いて、うつ病と低学歴のpleiotropyを、次の3つの方法で検証した。
(1)低学歴(メタ解析とは独立した被験者12万例)とうつ病(現在のサンプルについて10分割交差確認法としてleave-one-out法を使用)の集合データに基づく遺伝子プロファイルリスクスコア(GPRS)で検証。
→低学歴のGPRSはうつ病の状況を予測せず、またうつ病のGPRSは低学歴を予測しなかった。
(2)二変量genomic-relationship-matrix restricted maximum likelihood(GREML)法で検証。
→弱い負の遺伝学的関連が認められたが、この関連は一貫して有意ではなかった。
(3)SNP effect concordance analysis(SECA)法で検証。
→うつ病と低学歴のSNPの影響が一致するというエビデンスは確認されなかった。
・以上より、低学歴とうつ病リスクとの関連は認められたものの、これは測定可能な遺伝的多面発現効果によるものではなく、たとえば社会経済的状況といった環境因子が関与している可能性が示唆された。
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