2015年4月30日、都内にて金原出版創業140周年記念の特別講演が行われた。本講演では、実臨床ですぐに実践できる内科診療のコツが紹介された。
身体診察には技術が必要
第1部では、「身体診察のアプローチ」をテーマに徳田 安春氏(地域医療機能推進機構本部 総合診療顧問)が血圧、心拍、呼吸数をはじめとする身体診察の重要性をレクチャーした。
日常診療において、患者の様態が思わしくない際に、われわれは採血結果やCT・MRIといった検査に目がいきがちであるが、まず身体診察を行うことで多くの重要な情報が得られる。たとえば、「ショック状態」の患者にはまず静脈圧を測り、静脈圧が下がっている低静脈圧型ショック、上がっている高静脈圧型ショックに分類する。それぞれのカテゴリーで治療方針が異なるため、初期診断において確実に静脈圧を測定することが求められる。
また、身体診察にはその1つひとつの診察に技術を要する。たとえば「呼吸障害」ではとくに呼吸数が重要であり、これを省くと重要なバイタルサインを見逃してしまう可能性がある。具体的な呼吸数の測定では、少なくとも20秒は測定する。15秒未満では誤差が大きくなるためで、切迫した状況下であっても十分な時間で測定する必要があるという。
徳田氏は、日々の診療の中で、身体視察の技術を磨く重要性を強調し、第1部を締めくくった。
感染症治療を志す研修医へのメッセージ
第2部では、岩田 健太郎氏(神戸大学医学部附属病院 感染症内科 教授)が、自身の感染症専門医としての経験、そして、自院の研修医への教育について、熱く語った。
岩田氏は、2014年12月~2015年1月に西アフリカに渡航し、エボラ出血熱の感染症対策を行った経験を語り、十分な検査機器もない環境で、身体診察の重要性を痛感したという。
研修医の育て方の話題では、研修医が胃腸炎や肺炎患者のグラム染色を省略した結果、診断に必要な細菌を見逃しそうになった例を挙げ、日常のルーチン検査の重要性を述べた。そして、グラム染色で何か検出されそうにない場合でも、まずは行ってみること、グラム染色の限界──「何がみえるか」「何がみえないか」を認識し、診療に当たるべきであることを示した。
最後に、岩田氏は研修医に向け、「自分がどこまでできて、どれができていないかという現状認識をしっかりとし、そのうえで現状に満足せず上のレベルを目指してほしい」とエールを送り、第2部を締めくくった。
原因不明の発熱診療はこう診る
第3部では、「不明熱」の症例についてパネルディスカッションとなり、パネリストによる活発な意見交換が行われた。
「下がらない原因不明の発熱」で救急外来を訪れた患者の症例では、発熱の原因を鑑別診断するに当たり、以下の2点が大切であると示唆された。
1) さまざまな検査結果のみならず、来院するまでの様子、患者の置かれている社会状況や背景などを丁寧に問診すること。
2) この症例ではリンパ腫が疑われるが、生検を行うのが容易ではない場合、適切な生検部位を 同定し、外科に迅速な生検依頼を行うためにも陽電子放出断層撮影(以下「PET」)を活用すること。
PETを用いることでCTなどでは特定しづらい病巣の広がりを把握することができる。また、患者の腎機能が不良でも検査可能である。さらに、造影剤アレルギーのリスクが少ないという利点もある。
最後に 「不明熱であっても漫然と診療を行わず、PETなどの検査機器を用いて迅速に診断し、治療に繋げよう」と結ばれて、パネルディスカッションは終了した。
(ケアネット 中野敬子)