米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学のKeming Gao氏らは、双極性障害に対する各種非定型抗精神病薬の有効性と安全性について、治療必要数(NNT)または有害事象による治療中止(DAE)という観点でレビューを行った。その結果、FDAに承認されている薬剤においてNNTの差異は小さかったが、DAEに関する有害必要数(NNH)の差異は大きかったことを示した。結果を踏まえて、著者らは「非定型抗精神病薬の選択は安全性および忍容性に基づくべきである」と提言している。Neuroscience Bulletin誌オンライン版2015年5月30日号の掲載報告。
検討は、1980年1月~2014年10月30日にMEDLINEに掲載された英語文献を、抗精神病薬、非定型抗精神病薬の後発医薬品名ならびに先発医薬品名、「双極性うつ/双極性障害」「プラセボ」「治験」をキーワードとして検索した。原著論文より、レスポンスの指標(モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度[MADRS]トータルスコアの改善率が50%以上)、寛解(エンドポイントにおけるMADRSトータルスコアが12点以下または8点以下)、DAE、眠気、7%以上の体重増加、錐体外路症状の副作用(EPS)、アカシジアを抽出した。レスポンス、寛解に対するNNTまたはDAEに対するNNH、あるいはプラセボに関連する他の副作用を予測し、予測値を95%信頼区間と共に算出した。
主な結果は以下のとおり。
・レスポンスのNNTはオランザピン単独療法11~12、オランザピンとフルオキセチンの合剤(OFC)4、クエチアピン-IR単独療法7~8、クエチアピン-XR単独療法4、ルラシドン単独療法4~5、ルラシドン併用療法は7であり、プラセボに比べて優れていた。
・寛解のNNTはそれぞれ、11~12、4、5~11、7、6~7、6であり、プラセボに比べ優れていた。
・OFCとラモトリギン、アリピプラゾールまたはジプラシドンとプラセボとの間に、レスポンスと寛解に関する有意差は認められなかった。
・オランザピン単独療法、クエチアピン-IR、クエチアピン-XR、アリピプラゾール、ジプラシドン120~160mg/日は、DAEに関するNNHのリスクが有意に高く、それぞれ24、8~14、9、12、10であった。
・眠気に関しては、クエチアピン-XRのNNHが4と最小であった。
・7%以上の体重増加に関しては、オランザピン単独療法およびOFCのNNHがいずれも5と最小であった。
・アカシジアに関しては、アリピプラゾールのNNHが5と最小であった。
・これらの結果から、OFC、クエチアピン-IRと-XR、ルラシドン単独療法および精神安定剤へのルラシドン追加療法など、FDAに承認されている薬剤においてレスポンスおよび寛解に対するNNTの差異は小さいが、DAEや一般的な副作用に対するNNHの差異は大きいことが示された。
関連医療ニュース
双極性障害に対する非定型抗精神病薬比較
小児・思春期の双極性障害に対する非定型抗精神病薬vs気分安定薬
双極性障害、ベンゾジアゼピン系薬の使用実態は
(ケアネット)