チェコ共和国・国立精神保健研究所のF. Spaniel氏らは、統合失調症患者に対する遠隔医療プログラムが入院回数を減らすかについて検討を行い、有効性は認められなかったことを報告した。著者らは「先行研究で、この予防的戦略の失敗は、精神科医と患者両者のアドヒアランス不良にあることが示唆されている。統合失調症の3次予防は大きな課題であり、患者と治療に当たる精神科医の両者のより積極的な参加の下、戦略を実施する必要がある」と指摘している。Journal of Psychiatric and Mental Health Nursing誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。
研究グループが検討した遠隔医療プログラムは、統合失調症再発予防支援情報技術(ITAREPS:Information Technology Aided Relapse Prevention Programme in Schizophrenia)で、遠隔医療により統合失調症の週単位のモニタリングと治療を可能とするものである。同プログラムが入院回数を減らす効果があるのか、18ヵ月間にわたる多施設非盲検無作為化並行群間試験を行った。対象は、統合失調症または統合失調感情障害の外来患者で、プログラム介入群(74例)と対照群(72例)に無作為に割り付けて追跡した。介入群では、システムによって再発の前駆症状が通知された場合、治験責任医師が抗精神病薬の用量を増大した。
主な結果は以下のとおり。
・intention to treat解析の結果、介入群と対照群間の無入院生存率の有意差はみられなかった(Kaplan-Meier法によるハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:0.56~2.61、p=0.6)。
・多変量Cox比例ハザードモデルによる事後解析において、13の潜在的予測因子を除けば、ITAREPS関連変数のみが入院リスクを増大していることが示された(薬理学的介入のないアラート数のHR:1.38、p=0.042/ 患者のITAREPSアドヒアランス不良のHR:1.08、p=0.009)。
・本研究では、精神科医のアドヒアランス不良が示されており、前駆症状の初期段階で薬理学的介入が欠如していたことが、再発リスクに影響したと考えられる。
・今回および先行の遠隔医療プログラムITAREPS無作為化対照試験においても、統合失調症の再発予防における実質的な改善は、現状の臨床設定では困難であることが示唆された。
・将来的な統合失調症の予防戦略には、従来の外来診療では検出不可能である潜在的な前駆症状の発生を捉えて、迅速に薬理学的介入を行うことが求められる。
・ITAREPS試験では、再発予防遠隔医療システムと訪問看護サービスによるソリューションが、それらの要求に応えられる可能性が示唆された。
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