これまで治療法がなかった網膜色素変性症に対する、人工網膜システムArgus II(Second Sight社)が開発された。網膜色素変性症は光受容体の消失により失明に至る遺伝性のまれな疾患である。開発されたシステムは、メガネに搭載された小型カメラと映像プロセッサにより、イメージを電気信号に変換し網膜に移植した電気デバイスに送信して視覚を提供するというもの。今回、米国・ウィルズ・アイ・ホスピタルのAllen C. Ho氏らは、Argus II移植後1年および3年の臨床試験成績を報告。網膜色素変性症による失明に対し、視覚を回復するArgus IIの長期的な安全性と有用性が認められたことを明らかにした。なお、本研究の中間解析結果により承認申請がなされ、Argus IIシステムは世界初かつ唯一の網膜移植システムとして米国および欧州で承認された。Ophthalmology誌2015年8月号(オンライン版2015年7月8日)の掲載報告。
失明患者の視覚を回復するArgus IIの臨床試験
研究グループは、欧米の10施設においてArgus IIの安全性および有用性を検討する臨床試験を行った。
対象は、網膜色素変性症により失明した30例で、片眼にArgus IIを移植し、移植眼と非移植眼およびシステムオン時とオフ時(残存視覚)の視覚機能を比較した。
主要評価項目は、安全性(有害事象)およびコンピューターによる客観的な検査で測定される視覚機能である。
網膜色素変性症による失明に対して視覚を回復するArgus II臨床試験の主な結果は以下のとおり。
・移植3年後においても、30例中29例でArgus IIシステムが機能していることが確認された。
・3年間で11例、計23件の重篤な有害事象(デバイス関連または手術関連有害事象)がみられたが、全例が標準的な眼科的方法により治療可能であった。
・視覚機能検査および視力評価は、システムオフ時に比べシステムオン時で有意に良好であった。
(ケアネット)