エストロゲン受容体の遺伝子多型と肺がんは関係するのか?

提供元:ケアネット

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公開日:2015/09/08

 

 エストロゲン受容体(ER)遺伝子の一塩基多型(SNP)は、非喫煙女性における肺腺がんリスクと関係することを、国立台湾大学医学院附属病院のKuan-Yu Chen氏らが報告した。Journal of thoracic oncology誌オンライン版2015年8月21日号の掲載報告。

 これまでERの遺伝子多型と肺がんのリスクとの関係は、ほとんど研究されてこなかった。本研究の目的は、非喫煙女性における肺腺がんと関係するERの遺伝子多型を見つけることである。

 本研究の対象は肺腺がんに罹患している非喫煙女性532人と健常女性532人。ESR1ESR2のSNPのデータはゲノムワイド関連解析により収集し、多変量補正ロジスティック回帰分析により、ESR1ESR2のSNPと肺腺がんリスクとの関係性を調べた。発現量的形質遺伝子座(eQTL)分析により、エストロゲン受容体(ER)のSNPの機能的な役割を検討した。

 主な結果は以下のとおり。

ESR1では、7 種類のSNPが同定され、このうちrs7753153 と rs985192 が肺腺がんリスクと関係していた。それぞれ、rs7753153(オッズ比[OR]:1.509、95%CI:1.168~1.950)、rs985192(OR:1.309、95%CI:1.001~1.712)。

ESR2では、 rs3020450のみが肺腺がんリスクと関係していた(OR:2.110、95%CI:1.007~4.422)。

・ホルモン補充療法を受けたことがなく、肺腺がんリスクの高い遺伝子型を有する患者は、ホルモン補充療法を受けたことがあり、同遺伝子型を持たない患者と比べて、肺腺がんリスクが有意に高かった。rs7753153 GG(OR:2.133、95%CI:1.415~3.216)、rs985192 AA/AC (1.752、95%CI:1.109~2.768)、rs3020450 AG/GG(7.162、95%CI:1.608~31.90)。

・rs7753153とrs9479122のリスク遺伝子型はESR1発現の減少と関連していた(それぞれ、p=0.0248、p=0.0251)

 本研究結果より、非喫煙女性ではER遺伝子のSNPと肺腺がんリスクが関連していることがわかった。肺腺がんの発症には、ER遺伝子のSNPとホルモン補充療法の2つの因子が複合的に影響しており、このことは肺がんの発症における遺伝子環境の相互影響の重要性を示唆している。

(ケアネット 鎌滝 真次)