米国では、予防接種が小児における眼底出血の原因ではないかとの説が流布しているという。フィラデルフィア小児病院のGil Binenbaum氏らは、「予防接種が眼底出血を引き起こすならその頻度は高く、予防接種との時間的関連が認められるはず」として、眼科外来における乳幼児の眼底出血有病率と原因を調べた。その結果、2歳未満児の有病率は0.17%とまれであり、ワクチンの速効性および遅効性の両方の作用を考慮しても、予防接種と眼底出血との時間的関連は認められなかった。著者は、「予防接種を小児における眼底出血の原因と考えるべきではなく、臨床診療および訴訟においてこの根拠のない説を受け入れてはならない」と強調したうえで、「眼科医は、外来患者の診察において偶発的な眼底出血に注意し、その他の既知の眼疾患または内科的疾患がない場合は、小児虐待の評価を考えなければならない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌2015年11月号の掲載報告。
眼底出血は、命の危険にさらされた虐待の頭部損傷症例において重要な防御戦略を示す所見の1つである。もし、予防接種が眼底出血を引き起こしているのなら、小児虐待の評価に影響を及ぼすことが考えられる。
そこで研究グループは、フィラデルフィア小児病院眼科外来において2009年6月1日~12年8月30日の間に、理由のいかんを問わず散瞳下眼底検査を受けた生後1~23ヵ月の乳幼児5,177例について後ろ向きに分析した。眼内手術歴または進行性網膜血管新生を有する小児は除外した。
主要評価項目は、眼底出血の有病率と原因、検査および眼底出血前の7、14、21日以内の予防接種との時間的関連であった。
主な結果は以下のとおり。
・外来で眼底検査を受けた患児5,177例における眼底出血の有病率は、9例(0.17%、95%信頼区間[CI]:0.09~0.33%)であった。
・9例全例が、非眼球所見にて虐待による頭部損傷と診断可能であった。
・完全な予防接種の記録があったのは2,210例(眼底検査は計3,425件)であった。
・そのうち163例が予防接種後7日以内、323例が14日以内、494例が21日以内に検査が行われており、眼底出血が認められたのは予防接種後7日以内0、14日以内1例、21日以内0であった。
・予防接種と眼底出血との間の時間的関連は、7日(p>0.99)、14日(p=0.33)および21日(p=0.46)のいずれにおいても認められなかった。
(ケアネット)