米国での医療従事者の2つの大規模前向きコホート研究における検討で、長期のアスピリン使用が、がん全体とくに消化管腫瘍のリスク低下に、わずかではあるが有意に関連することが認められた。また、定期的なアスピリン使用が大腸がんのかなり高い割合で予防し、スクリーニング検査によるがん予防を補う可能性が示唆された。JAMA oncology誌オンライン版2016年3月3日号に掲載。
U.S. Preventive Services Task Force(USPSTF)は、米国の成人における大腸がんおよび心血管疾患予防のためにアスピリン使用を推奨しているが、アスピリン使用と他のがんリスクとの関連や、集団全体でのアスピリン使用の効果は明らかになっていない。米国ハーバード大学のYin Cao氏らは、アスピリンのさまざまな用量・使用期間で、がん全体およびサブタイプ別のがん予防における潜在的なベネフィットを調べ、さらに、スクリーニング検査の有無別にアスピリンの絶対ベネフィットを推定した。
対象は、米国の大規模前向きコホート研究であるNurses' Health Study(1980~2010年)とHealth Professionals Follow-up Study(1986~2012年)において、アスピリン使用を報告した医療従事者13万5,965人(女性8万8,084人、男性4万7,881人)で、1年おきにフォローアップした。女性は1976年の登録時に30~55歳、男性は1986年に40~75歳であった。主なアウトカムは、がん発症の相対リスク(RR)および人口寄与リスク(PAR)であった。
主な結果は以下のとおり。
・32年間追跡した女性8万8,084人と男性4万7,881人のうち、女性2万414例、男性7,571例にがんが発症した。
・定期的なアスピリン使用は不定期の使用と比較して、がん全体のリスク低下と関連していた(RR:0.97、95%CI:0.94~0.99)。これは、主に消化管がんの発症率低下(RR:0.85、95%CI:0.80~0.91)、とくに大腸がんの発症率低下(RR:0.81、95%CI:0.75~0.88)によるものであった。
・消化管がん予防におけるアスピリンのベネフィットは、少なくとも、アスピリンの標準的な錠剤0.5~1.5錠/週の使用でみられた。定期的使用とリスク低下との関連がられる最短期間は6年であった。
・50歳超の被験者のうち、定期的なアスピリン使用は下部内視鏡検査によるスクリーニングを受けていない人では10万人年当たり33の大腸がん(PAR:17.0%)を、受けた人では10万人年当たり18の大腸がん(PAR:8.5%)を防ぐことができた。
・定期的なアスピリン使用は、乳がん・進行前立腺がん・肺がんのリスクには関連していなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)