授乳中の気分安定薬は中止すべきか

提供元:ケアネット

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公開日:2016/07/08

 

 母乳哺育の乳児における気分安定薬の安全性について、トルコ・ネジメッティン・エルバカン大学のFaruk Uguz氏らが検討を行った。Bipolar disorders誌2016年6月号の報告。

 1995年1月1日~2015年8月30日の期間に英語で発表された文献を対象に、PubMedを用いて、キーワード(母乳哺育 、授乳、産後期、産褥、気分安定薬、リチウム等)に該当する文献の検索を行った。相対的な幼児用量、乳汁対血漿比、乳児薬物血漿レベル、有害事象といった関連データを含む症例報告、ケースシリーズ、プロスペクティブ研究、横断的研究を抽出した。

 主な結果は以下のとおり。

・関連文献604件中26件を研究対象とした。
・内訳は、ラモトリギン(12件、122例)、リチウム(5件、26例)カルバマゼピン(5件、64例)、バルプロ酸(3件、9例)、oxcarbazepine(2件、2例)であった。
・26件中、1件にカルバマゼピンとバルプロ酸の両方が含まれていた。
・これらのレポートによると、リチウムとラモトリギンはかなりの割合で母乳中に排出されることが示唆された。
・バルプロ酸とoxcarbazepineのデータは十分ではなかったが、乳児/母体の血漿中薬物濃度の比率が、他の気分安定薬と比較し、バルプロ酸の曝露では低いと考えられる。
・気分安定薬に曝露された乳児における有害事象の発生率は、非常に低いことが報告されている。

 結果を踏まえ、著者らは「気分安定薬は、たいていの乳児においていかなる有害事象も起こすことなく、授乳中の女性に処方可能であることが示唆された。また、乳児の肝機能、腎機能、甲状腺機能を含む臨床検査値異常が少ないことも示唆された。母乳哺育中の乳児における気分安定薬の短期的、とくに長期的影響を調査するさらなる研究が必要とされる」としている。

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(鷹野 敦夫)