近年、不同視弱視や斜視弱視の治療について両眼アプローチが提唱され、小規模試験で有望との結果が示されている。それを受けて米国・メイヨークリニックのJonathan M. Holmes氏らは、大規模無作為化試験により、弱視小児の視力改善について、両眼アプローチとしてiPadを用いたゲーム療法と、従来の定時的なアイパッチ療法を比較する検討を行った。その結果、弱視眼の視力改善はいずれの療法でもみられ、とくに弱視治療歴のない年少児(5~7歳未満)で認められた。しかし主要非劣性解析の結果は、割付治療のアドヒアランスの問題などもあり、確定には至らなかった。また、事後解析では、両眼iPad治療は1日2時間のアイパッチ療法ほど弱視眼の視力改善は良好ではないことが示唆されている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年11月3日号掲載の報告。
研究グループは、2014年9月16日~2015年8月28日にコミュニティクリニックで、多施設共同非劣性無作為化試験を行った。試験には、斜視または不同視、もしくは両者により弱視(20/40~20/200、平均20/63)を有する5~13歳未満の小児385例が参加した。
385例は、1日1時間の両眼iPadゲーム療法を行う群(両眼群190例)、または1日2時間の両眼アイパッチ療法を行う群(パッチ群195例)に無作為に割り付けられ、それぞれ16週間治療を受けた。
主要評価項目は、ベースラインから16週時点までの弱視眼の視力の変化であった。試験期間中、4、8、12、16週時にフォローアップ受診の予定が組まれ、16週間の試験治療を完了した被験者を組み込んで修正intent-to-treat解析を行い、評価した。
主な結果は以下のとおり。
・被験者385例の特性は、女児187例(48.6%)、平均年齢(SD)8.5(1.9)歳であった。
・16週時点で、弱視眼視力の平均改善値は、両眼群1.05 lines(0.105 logMAR)(両側95%信頼区間[CI]:0.85~1.24)、パッチ群1.35 lines(同:1.17~1.54)であった。
・補正後両群差は0.31 linesで、パッチ群を支持する結果であった。片側95%CIの上限値は0.53 linesであり、事前規定の非劣性の制限値0.5 linesを上回った。
・しかしながら、両眼群に無作為化されログファイルデータが入手できたのは39/176例(22.2%)のみであり、それら被験者の両眼療法の実行率は75%超(中央値46%、四分位範囲:20~72%)であった。
・より年少(5~7歳未満)で、弱視治療歴のない小児では、弱視眼の視力改善の平均値(SD)は、両眼群で2.5(1.5)lines、パッチ群2.8(0.8)linesであった。
・有害事象(複眼など)はまれであり、発現頻度は両群で同程度であった。
(ケアネット)