わが国での最近のインフルエンザとノロウイルス感染症の流行時における定点サーベイランスデータを用いた研究から、これら感染症の流行と土壌放射線が相関していることが報告された。本研究は岡山大学の井内田科子氏らによる探査的研究で、今回の結果から免疫力低下と土壌放射線による照射に潜在的な関連があることが示唆された。Epidemiology and infection誌オンライン版2017年1月16日号に掲載。
著者らは、インフルエンザとノロウイルス感染症の最近3回の流行期における定点サーベイランスデータ(20歳未満)を用いた。地理情報システム(GIS)の空間的解析手法を用い、定点発症率から流行拡大パターンをマッピングした。また、土壌中のウラン、トリウム、酸化カリウムのデータを用いて各定点での平均土壌放射線(dm)を算出、発症率を0.01μGy/h単位で調べ、発症率と平均土壌放射線との関連を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・インフルエンザとノロウイルス感染症の流行・集団感染は、放射線被曝が比較的高い地域でみられた。
・発症率と放射線量との間に正の相関が認められ、インフルエンザでは r=0.61~0.84(p<0.01)、ノロウイルス感染症では r=0.61~0.72(p<0.01)であった。
・放射線被曝が0<dm<0.01と0.15≦dm<0.16の地域の間には発症率の増加が認められ、インフルエンザは1.80倍(95%信頼区間:1.47~2.12)、ノロウイルス感染症は2.07倍(同:1.53~2.61)高かった。
(ケアネット 金沢 浩子)