2017年4月21日都内にて、「末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)の治療戦略と新たな一歩」と題するセミナーが開かれた(主催:ムンディファーマ株式会社)。演者である畠 清彦氏 (公益財団法人 がん研究会有明病院 血液腫瘍科部長)は、「2017年はPTCL治療におけるパラダイムシフトの年になる」とし、新薬への期待を述べた。
以下、セミナーの内容を記載する。
PTCLは高齢者に多く、予後が悪い
末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:Peripheral T-cell lymphoma)は65歳以上の高齢者に多い悪性リンパ腫の1つで、高齢になるほど発症率が高くなる。症状は発熱、大量の寝汗、6ヵ月以内の体重の10%以上の減少などが特徴だ。年間推計発症例が2,000例の、いわゆる希少疾病で、病型も多様である。
PTCLの1次治療はCHOP療法が標準とされるが、2次治療以降の標準治療は確立していない。しかし、再発または難治性PTCLの予後は中央値6.5ヵ月と非常に悪く、新しい治療法の開発が求められていた。
従来の併用化学療法における課題
従来、再発または難治性PTCLには多剤併用化学療法が施行されることが多かった。しかし、比較的毒性が強く、治療継続が難しいことから再発・再燃に至る患者さんも少なくなかった。また、治療は入院が基本で、外来可能な治療法でも投与完了まで6~8時間を要するという課題があった。「自宅での時間を大切にしたい」という患者さんの意向に添えないシーンもあったという。
「単剤療法」という新たな治療オプション
そのような中、本年3月、「ムンデシンカプセル100mg」(一般名:フォロデシン塩酸塩、以下ムンデシン)が世界に先駆けて日本で承認された。1回300mgを1日2回投与する経口タイプの薬剤だ。単剤使用が可能で、入院や持続点滴の必要もない。
再発または難治性PTCLを対象としたムンデシンの国内第I/II相臨床試験の結果は、奏効率(ORR)は22%(9/41例)、病勢安定(SD)以上(CR,PR,SD)は39%(16/41例)であった。全生存期間(OS)中央値は14.4ヵ月。主な有害事象は血液毒性で、リンパ球減少(grade4:81%)の高頻度の発現が認められたが、非血液毒性は軽微であった。リンパ球減少に伴うウイルス再活性化や易感染性には注意が必要だが、経口剤かつ非血液毒性が軽微という点で、再発または難治性PTCL患者の有望な治療オプションとなるだろう。
PTCLの疾患概念と治療手段のさらなる普及を
演者の畠氏は、「若い方は、移植や他治療も検討できる。しかし、移植が適応とならず、多剤併用化学療法も難しい高齢者も多い。このような高齢者にムンデシンは適している」と述べた。また年齢を問わず、強い副作用を避けたい患者さん、在宅治療を希望される、または社会復帰をしながら治療を継続したい患者さんに対しても負担が少ない治療手段とされる。
講演最後に畠氏は、「PTCLのような希少疾病は、まず患者さんを想起し、診断しないことには治療にもつながらない。まずは、新薬の発売を通して、医療者側も、患者さん側もPTCLという疾患の存在や治療の進歩について知っていただきたい」とメッセージを残した。
(ケアネット 佐藤 寿美)