頭頸部がん領域で求められる体制整備

提供元:ケアネット

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公開日:2017/05/08

 

 2017年4月27日、都内にて“頭頸部がん治療とがん免疫療法薬「オプジーボ」”と題するセミナーが開かれた(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社)。演者である田原 信氏 (国立がん研究センター東病院 頭頸部内科長)は、「今後、免疫療法は頭頸部がん治療に新たな展望をもたらすだろう」と期待を述べた。

 以下、セミナーの内容を記載する。

頭頸部がんにおける治療課題

 頭頸部がんは、口腔、咽頭、喉頭、甲状腺など、頭頸部領域に発生するがんの総称である。本邦の年間推計患者数(甲状腺がんを除く)は4万7,000人。Stage III、IV期の進行がんが約6割で、その半数は再発に至る。再発後は化学放射線療法などが施行されるが、頭頸部が対象のため、「ご飯が飲み込めない」「皮膚がただれる」といった急性毒性で苦しむ患者も多い。
 さらに、晩期毒性による死亡リスクの増大も問題であった。

頭頸部がんへの新たな標準治療オプション

 新たな治療手段が求められるなか、2017年3月24日、抗PD-1抗体「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」が、「再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん」に対する適応を取得した。

 オプジーボは、プラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部がん患者361例を対象としたCheckMate-141試験で、全生存期間7.49ヵ月(95%CI:5.49~9.10)と、対照群の5.06ヵ月(95%CI:4.04~6.05)に対して有意な延長を示した(HR:0.70、97.73%CI:0.51~0.96、p=0.01011 [層別 log-rank検定])。安全性プロファイルは、これまでの臨床試験の結果と一貫しており、プラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部がんへの新たな標準治療オプションになると予想される。

頭頸部がんは免疫抑制腫瘍

 とくに、頭頸部がんの微小環境内では、さまざまな段階で免疫調節が生じているとの報告もある。オプジーボのような免疫チェックポイント阻害薬は、免疫抑制腫瘍である頭頸部がんに高い抗腫瘍効果をもたらすと期待される。実際、頭頸部がんを対象に複数の免疫チェックポイント阻害薬が開発段階にある。今後も免疫療法は、頭頸部がん治療に新たな展望をもたらすだろう。

他科連携、診療連携プログラムの構築で緊密な連携を目指す

 その一方で、副作用管理、バイオマーカー探索などの課題も存在する。とくに、頭頸部がんはがん全体からみればマイナーながん種ということもあり、頭頸部がんに精通した医師自体が少なく、これまで集学的治療が実践されてこなかった。頭頸部がんの専門医は主に、耳鼻咽喉科・頭頸部外科を中心とする「頭頸部外科専門医」、口腔外科が中心の「口腔外科専門医」、腫瘍内科医が中心の「がん薬物療法専門医」と、複数の診療科にまたがっている。今後は医科歯科連携、頭頸部がん薬物療法診療連携プログラムの構築といった、緊密な連携による対策が求められるだろう。

 また、肺がんでの「SCRUM-Japan」のような無償での検索体制構築はなく、Precision Medicineに向けた課題は存在する。今後、頭頸部がん領域でも体制整備が進み、さらなる治療成績向上が実現することを期待したい。

(ケアネット 佐藤 寿美)