2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。
このうち、「Precision medicine」については堀田 勝幸氏(岡山大学病院 新医療研究開発センター 教授)が登壇した。以下、堀田氏のコメントと注目演題を紹介する。
【堀田 勝幸氏コメント】
がん薬物療法の歴史は1943年のリンパ腫に対するnitrogen mustard(化学兵器)にはじまり、その後DNA合成阻害を主軸とする殺細胞性抗がん剤が広く開発されてきた。一方この20~30年間で、革新的な技術の導入に伴い、正常細胞とがん細胞の分子生物学的相違を特定することが可能となった。この技術を背景として標的分子異常に対する創薬開発が行われ、1997年には乳がんに対する抗体製剤(トラスツズマブ)が、2001年には慢性骨髄性白血病に対する分子標的薬(イマチニブ)がそれぞれ登場し、がん医療に大きな変革をもたらした。以降、さまざまながん腫でさまざまながん原性分子異常が見出され、臓器単位の大きなくくりから分子異常に基づいた創薬が行われ、適正な治療戦略が構築されていく、いわゆるprecision medicineが確立し、現在に至っている。
precision medicineをさらに医療社会に実装するには、網羅的で正確、かつ、汎用性を有する分子異常診断法の確立と整備、そしてそのデータの高精度な管理が必要である。同時にこれらに携わる人材の育成と確保も求められる。今回のJSMO学術集会では上記に関するシンポジウムを複数企画し、現状と課題について検討する。加えて、国家的なprecision medicineの体制整備に関する日米欧三極のリーダーを招へいし、現状の問題点の共有と今後の国際連携についても討議していく。
また個々の患者に対して分子標的薬による最大効果・安全性を担保するために、薬剤の適正使用は必須要素である。臨床現場の目線でprecision medicineの確実な実装をしていくために、口腔支持療法・栄養などを含めた患者管理・教育に関するさまざまな最新の取り組みや工夫を多職種間で持ち合ったうえで現状の整理と問題点の抽出を行い、明日からの診療につながる実利的なセッションも企画されている。
【注目演題】
シンポジウム
「ゲノム医療にかかわる人材育成」
日時:7月29日(土)8:20~10:20
場所:Room 15(神戸国際会議場5F 504+505 会議室)
「チームで取り組む分子標的薬の副作用マネジメント 患者へベネフィットをもたらす支持療法」
日時:7月29日(土)10:20~12:20
場所:Room 2(神戸国際展示場2 号館1F コンベンションホール南)
「次世代シークエンサーなど多遺伝子異常診断機器の医療機器として薬事承認・保険償還への道」
日時:7月29日(土)15:00~17:00
場所:Room 3(神戸国際展示場2 号館1F コンベンションホール北)
Special Lecture
「Cancer Data Collaboratives: Requirements for Personalized Medicine」
日時:7月28日(金)8:20~9:20
場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)
Asia & Oceania Joint Symposium
「Precision medicine, its current status and possibilities for future collaborations」
日時:7月28日(金)8:20~9:20
場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館 1F ポートピアホール)
International Symposium
「Nation-wide basket/umbrella type study for precision medicine」
日時:7月28日(金)10:20~12:20
場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館 1F ポートピアホール)
ASCO/JSMO Joint Symposium
「Current status of molecular targeted therapy in lung cancer」
日時:7月28日(金)17:00~19:00
場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館 1F ポートピアホール)
【第15回日本臨床腫瘍学会学術集会】
■会期:2017年7月27日(木)~29日(土)
■会場:神戸コンベンションセンター、Junko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)
■会長:谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科学講座)
■テーマ:最適のがん医療— いつでも、何処でも、誰にでも —
第15回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページは
こちら
(ケアネット 遊佐 なつみ)