2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。
このうち、「緩和・支持療法」については西森 久和氏(岡山大学病院 血液・腫瘍内科 助教)が登壇した。以下、西森氏のコメントと注目演題を紹介する。
【西森 久和氏コメント】
緩和・支持療法とは、がんに伴うさまざまな苦痛や症状、抗がん薬の副作用などを和らげるための治療である。がんを告知された患者さんは、がんに伴う痛みだけでなく、精神的にも不安やいらだちを感じ、社会的にも仕事を継続できなくなるなどの問題を抱えており、医療者は「苦痛」を全人的に捉えたうえで、サポートをしていく必要がある。がん対策基本法での緩和ケアの推進により、よりよい緩和医療が提供されるようになってきているが、いまだ不十分な点も多いのが現状といえる。本学会では、最新の緩和ケアに関するトピックスに加え、現状を直視したうえでよりよい方向性を見出すためのシンポジウムを数多く準備している。
医学の進歩により、さまざまな抗がん薬が開発され、それに伴う副作用も多様化している。一般的な抗がん薬による治療のイメージは、吐き気や嘔吐がつらい、脱毛など美容上の問題がある、などネガティブなものが多いかと思われるが、新しい制吐薬の開発など支持療法の分野も進歩しており、より効果的な抗がん薬をより安全に、やさしく患者さんに投与できる時代になってきている。本学会では支持療法に関しても、エビデンスに基づき患者さんの生活の質を保つことのできる情報を多く提供する予定である。
また、会期中神戸国際会議場では「患者・家族向けプログラム~いつでも、何処でも、最適のがん医療を受けるために~」が開催され、その模様がJunko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)でライブ中継される。各日午後には、両会場で相互交流を図る患者発のプログラムが予定されており、医療者にとっても「患者目線」を知ることができる機会となっている。
【注目演題】
合同シンポジウム(日本緩和医療学会 / 日本臨床腫瘍学会)
「緩和ケアに関わるガイドラインの変更と解説」
日時:7月28日(金)10:20~12:20
場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)
セミプレナリーセッション
「「予後2年」の望ましい伝え方:どのようながん患者がどのような台詞を好むか?」
日時:7月29日(土)8:20~10:20
場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)
シンポジウム
「症状スクリーニングと緩和治療―早期からの緩和ケアを目指して―」
日時:7月27日(木)14:50~16:30
場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)
「口腔のケア・がん口腔支持療法を推し進めるために―論拠に基づいた実践を目指して」
日時:7月28日(金)8:20~10:20
場所:Room 5(神戸国際展示場1号館2F Hall B)
「口腔のケア・がん口腔支持療法を推し進めるために―人材を養成する体制から在り方を問う」
日時:7月28日(金)10:20~12:20
場所:Room 5(神戸国際展示場1号館2F Hall B)
「Whole Person Care 〜 Care for cancer patients 〜」
日時:7月28日(金)17:00~18:30
場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)
「チームで取り組む分子標的薬の副作用マネジメント 患者へベネフィットをもたらす支持療法」
日時:7月29日(土)10:20~12:20
場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)
「外来がんリハビリテーション エビデンス&プラクティス」
日時:7月29日(土)15:00~17:00
場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)
ワークショップ
「緩和ケア病棟転院時の患者・家族の見捨てられ感について~安心して転院できますか」
日時:7月27日(木)9:20~11:00
場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)
「がん治療中の患者の decision making のサポート―がん治療する?しない?―」
日時:7月27日(木)13:00~14:40
場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)
教育講演
「がん患者とのコミュニケーション」
日時:7月27日(木)14:00~14:30
場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)
「緩和ケアにおける EBM」
日時:7月29日(土)9:20~9:50
場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)
「がん化学療法後のB型肝炎ウイルス再活性化のリスクとその対策」
日時:7月29日(土)9:50~10:20
場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)
「がん連携における在宅支持療法」
日時:7月29日(土)10:20~10:50
場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)
「がんのリハビリテーション」
日時:7月29日(土)10:50~11:20
場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)
「がん患者の家族へのサポート」
日時:7月29日(土)11:20~11:50
場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)
【第15回日本臨床腫瘍学会学術集会】
■会期:2017年7月27日(木)~29日(土)
■会場:神戸コンベンションセンター、Junko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)
■会長:谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科 特任教授)
■テーマ:最適のがん医療— いつでも、何処でも、誰にでも —
第15回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページは
こちら
(ケアネット 遊佐 なつみ)