米国・ブラウン大学のEric Jutkowitz氏らは、認知症によるコストを見積もるために、非認知症者をケアするコストと、それを上回る認知症者ケアコストを比較、検討した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2017年8月17日号の報告。
著者らは、新たに認知症と診断された方の疾患進行をシミュレートする、エビデンスベースの数学的モデルを開発した。認知、機能、行動および心理学的症状のデータドリブン曲線を用いて疾患進行をモデル化し、コストを予測した。モデルを用いて、認知症者の生涯および年間コストの評価、認知症の臨床的特徴の有無によるコストの比較、12ヵ月間の機能低下または行動および心理学的症状の10%低下(MMSEスコア21点以下)による影響の評価を行った。
主な結果は以下のとおり。
・診断時(平均83歳)から、認知症者の生涯総ケアコストは、32万1,780ドルであった。
・コスト負担は、家族70%(22万5,140ドル)、メディケイド(公的医療保険)14%(4万4,090ドル)、メディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険)16%(5万2,540ドル)であった。
・認知症者の生涯ケアコストは、非認知症者と比較し、18万4,500ドル(家族負担86%)高かった。
・年間総コストは8万9,000ドル、純コストは7万2,400ドルでピークに達した。
・機能低下または行動および心理的症状を10%軽減することで、自然な疾患進行よりも、生涯コストはそれぞれ3,880ドル、680ドル軽減された。
著者らは「認知症は、生涯ケアコストを大幅に増加させる。家族が最も多くのコストを負担するため、家族支援のための長期にわたる効果的な介入が必要である」としている。
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