非小細胞肺がん(NSCLC)の1%にみられるROS1融合遺伝子陽性肺がんではとくに、脳転移が多くみられる。ROS1肺がんではクリゾチニブが治療適応となるが、脳転移への効果は明らかになっていない。ROS1肺がんにおける脳転移の状況と共に、ROS1肺がん脳転移に対するクリゾチニブの効果を評価した後ろ向き試験について、中国・Shanghai Lung Cancer CenterのShun Lu氏が発表した。
2014年4月~2016年10月の53例のROS1患者のうち13例(24.5%)がクリゾチニブ投与前に脳転移があった。27例がPDとなったが、そのうち12例(44.4%)に脳転移が発症した。
脳転移のある患者の無増悪生存期間(PFS)は11.0ヵ月、脳転移のない患者では20.4ヵ月であった(p=0.03)。全生存期間(OS)は、脳転移のある患者では16.5ヵ月、脳転移のない患者では未達成であった(p=0.27)。
ベースライン時に脳転移のあった患者全体の脳内ORRは84.6%、脳転移の前治療を行った患者では100%、行わなかった患者では71.4%であった。脳内PFSは、脳転移の前治療を行った患者では12.5ヵ月、行わなかった患者では11.0ヵ月で、脳転移の前治療の有無とは関連がなかった。
クリゾチニブ投与前の脳転移の有無は、クリゾチニブ治療後のPFSおよびOSに大きな影響を与えた。ROS1肺がんの脳転移に対しクリゾチニブは臨床ベネフィットを与えた。
(ケアネット 細田 雅之)