マスメディアは人々の行動に大きな影響を与える。非燃焼加熱式(Heat–Not-Burn、以下HNB)タバコ「IQOS」が人気娯楽番組「アメトーーク!」で取り上げられ、その人気に火がついたようである。大阪国際がんセンターの田淵 貴大氏らは、2つのデータソースを使用して、日本におけるIQOSを含むHNBタバコへの関心度、使用率、HNBタバコの2次的曝露による症状などについて研究した。Tobacco Control誌オンライン版2017年12月6日号に掲載。
研究概要
・Google Trendによる検索量(Ralative Serarch Volume)を使用して、HNBタバコ(IQOS、PloomTech、glo)に対する母集団の関心度を調査した。調査期間は2013年4月1日~2017年4月1日。
・楽天リサーチパネル(15~69歳)8,240人のインターネット調査で、HNBタバコ使用率、HNBタバコ開始の予測因子、HNBタバコのエアロゾル暴露による症状を追跡調査した。ベースライン調査は2015年1~2月、追跡調査は1年後の2016年1~2月に、2年後の2017年1~2月に実施。
「アメトーーク!」放映がきっかけとなりIQOSが急速に普及
2016年4月28日、人気の娯楽テレビ番組「アメトーーク!」でIQOSを取り上げた回が放映された。
・IQOSのインターネット検索は、同番組放映週(2016年4月1~30日)において、急峻な上昇(スパイク状)を示し、最大値が記録された。その後は若干低下するものの、依然として高値を続けている。
・「アメトーーク!」視聴者は、非視聴者に比べIQOSの使用率が高かった。2017年における使用率は、番組視聴者の10.3%に対し非視聴者は2.7%であった。
・母集団におけるIQOSの使用率は、2015年1月~2月の0.3%、2016年1月~2月0.6%、番組放映後の2017年1月~2月には3.6%と、約10倍となった。
IQOS国内使用者は310万人、禁煙意志のある喫煙者が使用する傾向
・母集団の上記使用率から推計すると、17~71歳の本邦の人口8,600万人のうち、IQOS使用者は310万人となる。
・ベースライン時に禁煙意志がある喫煙者は、禁煙意志のない喫煙者に比べ、IQOS使用率が高かった。2017年におけるIQOS使用率は、禁煙意志あり喫煙者18.8%に対し、禁煙意志なし喫煙者6.7%であった。
なお、HNBタバコと電子タバコを合わせた使用率は4.7%、HNBと電子タバコの併用者は3.4%であった。また、ほかのHNBタバコ(PloomTechとglo)の検索量は、IQOSに比べ低値であり、番組放映による変化もみられなかった。使用率については、いずれも増加しているものの、2017年のPloom Tech使用率は1.2%、gloは0.8%と、IQOSに比べかなり低い。
HNBタバコのエアロゾル曝露による症状訴え37%
他者のHNBタバコのエアロゾルに2次的に曝露された経験については、以下のような結果であった。
・曝露経験者は母集団の12%を占めた。
・そのうち何らかの症状(のどの痛み、目の痛み、気分不快など)の体験者は37%であった。ただし、症状は重篤ではなかった。
HNBタバコ使用者への影響や、公衆衛生へのインパクトは十分にわかっていない。筆者らは、HNBタバコの急速な全国普及の可能性を示唆し、HNBタバコの監視を継続するとともに、規制方法を検討する必要がある、と述べている。
(ケアネット 細田 雅之)