フックス角膜内皮変性症などの角膜内皮障害は、角膜の含水量に異常を来し、水疱性角膜症として角膜の混濁と視力低下を引き起こす。京都府立医科大学の木下 茂氏らは、水疱性角膜症患者において、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬とともに、培養したヒト角膜内皮細胞(CEC)を前房内に注入することにより、24週間後にCEC密度が増加し、視力が改善したことを明らかにした。NEJM誌2018年3月15日号掲載の報告。
検討は、単一群の非比較試験にて行われた。対象は、水疱性角膜症と診断され、CEC検出不可の11例。ドナーの角膜から得て継代培養したヒトCEC株計1×106個を、ROCK阻害薬(最終量300μL)とともに治療眼の前房内に注入し、その後3時間、患者を腹臥位とした。
主要評価項目は、注入後24週における、角膜中央部のCEC密度500個/mm2以上増加を伴う角膜透明度の回復。副次評価項目は、注入後24週における、角膜厚630μm未満、視力検査(ランドルト環)で最高矯正視力の2段階以上改善とした。
主な結果は以下のとおり。
・注入後24週において、11眼中11眼(100%、95%信頼区間[CI]:72~100)でCEC密度500個/mm2以上の増加を認めた(範囲:947~2,833)。
・10眼は、1,000個/mm2を超えていた。
・11眼中10眼(91%、95%CI:59~100)で、角膜厚630μm未満(範囲:489~640)への回復が認められた。
・11眼中9眼(82%、95%CI:48~98)で、最高矯正視力の改善が2段階以上認められた。
(ケアネット)