「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」5年ぶりの改訂

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/15

 

CKD診療ガイドラインが全面改訂

 日本腎臓学会は6月、5年ぶりの改訂となる「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」を発行した。今回は専門医だけではなく、かかりつけ医や非専門医の利用を想定して制作されており、全面改訂する際に「CKD診療ガイド2012」と「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」を一元化させている。

 前回同様、全章がクリニカルクエスチョン(CQ)形式の構成。CKD診療ガイドライン2018の主な改訂ポイントとして“STOP-DKD宣言”で注目を集めた、糖尿病性腎臓病(DKD)が章立てられているほか、高血圧・心血管疾患(CVD)、高齢者CKDについても詳しく取り上げられている。

CKD診療ガイドラインの役割

 本ガイドラインはすべての重症度のCKD患者を対象とし、診療上で問題となる小児CKDの特徴と対処法、CKD患者の妊娠時についても簡潔に記載されている。ただし、末期腎不全(ESKD)に達した維持透析患者や急性腎障害(AKI)患者は除外されているため、必要に応じて他のガイドラインを参照する必要がある。本来であれば病診連携が必要とされる疾患だが、本ガイドラインは専門医が不在とする地域での、かかりつけ医によるCKD診療のサポートに配慮した構成となっている。

CKD診療ガイドライン2018では75歳以上は150/90mmHg未満を推奨

 CKD診療ガイドライン第4章の「高血圧・CVD」では、血圧基準値を「糖尿病の有無」「尿蛋白の有無(軽度尿蛋白[0.15g/gCr]以上を尿蛋白ありと判定)」「年齢(75歳で区分)」の3つのポイントで定めている。

・75歳未満の場合
 CKDステージを問わず、糖尿病および尿蛋白の有無で判定
 糖尿病なし:尿蛋白(-)140/90mmHg未満、尿蛋白(+)130/80mmHg未満
 糖尿病あり:尿蛋白(+)130/80mmHg未満

・75歳以上の場合
 糖尿病、尿蛋白の有無にかかわらず150/90mmHg未満
 起立性低血圧やAKIなどの有害事象がなければ、140/90mmHg未満への降圧を目指すが、80歳以上の120/60mmHg以下での管理において、Jカーブ現象が見られたという研究報告もあることから過降圧への注意も提案されている。

CKD診療ガイドライン2018では高齢者への対応に変化

 CKD診療ガイドライン第12章「高齢者CKD」では、高齢者CKDの年齢が“75歳以上”と改訂されており、これは2017年に日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループ において、「75歳以上を高齢者」と定義付けたことが反映されている。また、同章にはフレイルに対する介入のCQが盛り込まれており、これは厚生労働省が今年度より本格実施を始めた「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」に沿った改訂であることが伺える。

DKDの推奨検査項目と管理目標値

 CKD診療ガイドライン第16章「糖尿病性腎臓病(DKD)」では4つのCQが挙げられており、「尿アルブミン尿の測定」「浮腫を伴うDKDへのループ利尿薬投与」「HbA1c7.0%未満」「集約的治療」を推奨している。とくに血管合併症の発症・進行抑制ならびに総死亡率抑制のために集約的治療が重要とされ、以下の管理目標値を推奨としている。

・BMI 22(生活習慣の修正[適切な体重管理、運動、禁煙、塩分制限食など])
・HbA1c7.0%未満(現行のガイドラインで推奨されている血糖)
・収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満
・LDLコレステロール120mg/dl、HDLコレステロール40mg/dl、中性脂肪150mg/dl未満(早朝空腹時)

 ただし、「多因子の厳格な治療を推奨することで、投与薬剤数の増加や薬剤に関連する低血糖、過降圧、浮腫、高カリウム血症などのリスクが高まることにも注意が必要であり、適切なモニタリングと患者背景や生活環境を十分に勘案するように」といった注意事項も明記されている。

PKD病診連携の架け橋に

 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は透析導入原因の第4位となる疾患であるが、指定難病のため腎臓専門医・専門医療機関への紹介が必要となる。CKD診療ガイドライン第17章-3には、かかりつけ医による診療ポイントとして「脳動脈瘤」「トルバプタンによる治療」「血圧管理」について記載されているが、詳細については「エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2017」を参照とされている。

今後の方針

 今後の方針として「同改訂委員会が継続しメディカルスタッフや患者を利用者に想定したCKD療養ガイド2018を作成、出版する」と記され、医療者と患者が一体となって治療に取り組むことで、透析導入予防や医療費抑制につながることが期待される。

(ケアネット 土井 舞子)