統合失調症患者における自殺のリスク因子に関するメタ解析

統合失調症患者の自殺に関連する生涯リスクは、自殺で5%、自殺企図では25~50%といわれている。米国・テキサス大学健康科学センター ヒューストン校のRyan Michael Cassidy氏らは、統合失調症患者の自殺率に関連するリスク因子を明らかにするため、メタ解析を実施した。Schizophrenia bulletin誌2018年6月6日号の報告。
PubMed、Web of Science、EMBASEより検索を行い、参考文献リストについても併せて検索を行った。自殺念慮または自殺企図を有する統合失調症患者、自殺していない患者との比較を報告した研究を選択基準とした。また、補足分析としてコホート研究のメタ解析も行った。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象として、96研究、8万488例が抽出された。
・自殺念慮を有する統合失調症患者では、抑うつ症状が重く(p<0.0001)、PANSS総スコアが高く(p<0.0001)、精神科入院回数が多かった(p<0.0001)。
・自殺企図との関連に最も一致した変数は、以下であった。
●飲酒歴(p=0.0001)
●精神医学的疾患の家族歴(p<0.0001)
●身体合併症(p<0.0001)
●うつ病歴(p<0.0001)
●自殺の家族歴(p<0.0001)
●薬物使用歴(p=0.0024)
●喫煙歴(p=0.0034)
●白人(p=0.0022)
●抑うつ症状(p<0.0001)
・最初の2項目(飲酒歴、精神医学的疾患の家族歴)は、コホート研究のメタ解析においても有意な差が認められた。
・自殺との関連に最も一致した変数は、以下であった。
●男性(p=0.0005)
●自殺企図歴(p<0.0001)
●若年(p=0.0266)
●高い知能指数(p<0.0001)
●治療アドヒアランスの不良(p<0.0001)
●絶望状態(p<0.0001)
・最初の3項目(男性、自殺企図歴、若年)は、コホート研究のメタ解析においても有意な差が認められた。
著者らは「本調査結果は、将来の自殺の予防戦略において役立つであろう。今後の研究では、多変量予測分析法を用いて上記の因子を組み合わせることで、統合失調症における自殺率を客観的に層別化することが可能となるであろう」としている。
■関連記事
日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大
統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか
日本成人の自殺予防に有効なスクリーニング介入:青森県立保健大
(鷹野 敦夫)
関連記事

日本人統合失調症患者における自殺企図の特徴は?:岩手医科大学
疫学(危険因子) 日本発エビデンス(2012/12/11)

統合失調症と気分障害の入院患者における代謝障害の相違点
医療一般 日本発エビデンス(2020/10/22)

統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査
疫学(予後)(2013/09/02)
[ 最新ニュース ]

FDAへの医療機器メーカーの有害事象報告、3分の1が遅延/BMJ(2025/04/04)

フィネレノン、2型DMを有するHFmrEF/HFpEFにも有効(FINEARTS-HFサブ解析)/日本循環器学会(2025/04/04)

急性GVHDとICANSに対する新たな診断法の開発/日本造血・免疫細胞療法学会(2025/04/04)

市中肺炎へのセフトリアキソン、1g1日2回vs.2g1日1回~日本の前向きコホート(2025/04/04)

抗精神病薬の血中濃度、年齢や性別の影響が最も大きい薬剤は(2025/04/04)

遺伝性消化管腫瘍診療に対する多施設ネットワークの試み/日本臨床腫瘍学会(2025/04/04)

幹細胞治療が角膜の不可逆的な損傷を修復(2025/04/04)

普通車と軽自動車、どちらが安全?(2025/04/04)
[ あわせて読みたい ]
クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26)
~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】(2019/06/15)
Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07)
薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30)
全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31)
ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15)
診療よろず相談TV(2013/10/25)
在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12)
「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)
柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)