統合失調症患者における自殺のリスク因子に関するメタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2018/07/10

 

 統合失調症患者の自殺に関連する生涯リスクは、自殺で5%、自殺企図では25~50%といわれている。米国・テキサス大学健康科学センター ヒューストン校のRyan Michael Cassidy氏らは、統合失調症患者の自殺率に関連するリスク因子を明らかにするため、メタ解析を実施した。Schizophrenia bulletin誌2018年6月6日号の報告。

 PubMed、Web of Science、EMBASEより検索を行い、参考文献リストについても併せて検索を行った。自殺念慮または自殺企図を有する統合失調症患者、自殺していない患者との比較を報告した研究を選択基準とした。また、補足分析としてコホート研究のメタ解析も行った。

 主な結果は以下のとおり。

・分析対象として、96研究、8万488例が抽出された。
・自殺念慮を有する統合失調症患者では、抑うつ症状が重く(p<0.0001)、PANSS総スコアが高く(p<0.0001)、精神科入院回数が多かった(p<0.0001)。

・自殺企図との関連に最も一致した変数は、以下であった。
 ●飲酒歴(p=0.0001)
 ●精神医学的疾患の家族歴(p<0.0001)
 ●身体合併症(p<0.0001)
 ●うつ病歴(p<0.0001)
 ●自殺の家族歴(p<0.0001)
 ●薬物使用歴(p=0.0024)
 ●喫煙歴(p=0.0034)
 ●白人(p=0.0022)
 ●抑うつ症状(p<0.0001)
・最初の2項目(飲酒歴、精神医学的疾患の家族歴)は、コホート研究のメタ解析においても有意な差が認められた。

・自殺との関連に最も一致した変数は、以下であった。
 ●男性(p=0.0005)
 ●自殺企図歴(p<0.0001)
 ●若年(p=0.0266)
 ●高い知能指数(p<0.0001)
 ●治療アドヒアランスの不良(p<0.0001)
 ●絶望状態(p<0.0001)
・最初の3項目(男性、自殺企図歴、若年)は、コホート研究のメタ解析においても有意な差が認められた。


 著者らは「本調査結果は、将来の自殺の予防戦略において役立つであろう。今後の研究では、多変量予測分析法を用いて上記の因子を組み合わせることで、統合失調症における自殺率を客観的に層別化することが可能となるであろう」としている。

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(鷹野 敦夫)