2018年7月19日から3日間、都内で日本ペインクリニック学会 第52回大会「あなたの想いが未来のペインクリニックを創る-専門性と多様性への挑戦-」が開催された。本稿では、7月20日のシンポジウム「帯状疱疹関連痛の治療、予防の未来を考える」から、木村 嘉之氏(獨協医科大学 麻酔科学講座 准教授)が発表した「帯状疱疹関連痛の疫学と予防」について、概要を紹介する。
PHNは、痛みの期間が長いと発症リスクが上がる
帯状疱疹は、初感染を経て細胞に潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルスが何らかの原因により再燃することで発症し、これに起因した一連の痛みは、帯状疱疹関連痛と呼ばれている。帯状疱疹関連痛は、皮疹による痛み(侵害受容性疼痛)と、帯状疱疹後神経痛(神経障害性疼痛)に分けられ、病期に伴い痛みの性状は変化していく。
帯状疱疹の発症数は近年増加傾向にあり、わが国では、50歳以上で帯状疱疹の罹患率が上昇するという報告がある
1)。とくに皮膚症状・疼痛が中等度~重症の患者では、痛みが遷延し、帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行することがあり、海外では、50歳以上の帯状疱疹患者の18%がPHNを発症すると報告
2)されている。
PHNのリスクは、重症度、年齢、ウイルスの感染部位などによって異なるが、痛み治療の遅れがPHN発症につながる可能性も指摘されている。PHNは、長期に続く痛み・かゆみが患者のQOLを大きく低下させるため、帯状疱疹の予防と適切な治療の早期導入が重要だ。
PHNの予防には、帯状疱疹ワクチンが有効
PHNの予防として、木村氏は、まず水痘にならないこと、そして帯状疱疹を発症させないことを強調した。患者に水痘罹患歴がない場合は、水痘ワクチン接種で発症を予防できる。水痘に罹患しなければ、ウイルスの潜伏もなく、将来的な帯状疱疹の発症はないと考えられる。
水痘ワクチンは2014年から定期接種の対象になっているため、近年患者数は激減しているが、成人の90%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスへの感染歴がある
3)という。よって、この集団における将来的な帯状疱疹発症の予防が急務となる。同氏は、高齢者が水痘患者と接する機会が減ったことで、追加免疫効果を得られず、帯状疱疹ウイルスに対する抗体価が低下している可能性を指摘する。そこで推奨されるのが、帯状疱疹ワクチンだ。水痘の感染歴がある場合でも、ワクチン接種で抗体価をあげることによってウイルスの再活性化を予防できるという。
また、帯状疱疹の予防には、日常生活の中で、免疫力の低下(過度のストレスや体力低下など)を避けることも大切だ。同氏は、「50歳以上の患者さんには、帯状疱疹・PHNの予防策として、水痘・帯状疱疹ワクチンを推奨する必要がある」と強く訴えた。
なお、帯状疱疹が発症してしまった場合、PHNなど痛みの遷延化を防ぐためには、早期診断、抗ウイルス薬の投与とともに、痛みに対する適切な治療を開始することが重要となる。
海外では、ワクチン接種がPHNへの移行を予防する可能性が報告
4)されている。わが国では、帯状疱疹ウイルスワクチン(生ワクチン)が発売されており、任意で接種を受けることができる。なお、2018年3月にはサブユニットワクチンが承認されており、発売が待たれる。
〔8月13日 記事の一部を修正いたしました〕
■参考
1)国立感染症研究所 宮崎県の帯状疱疹の疫学(宮崎スタディ)
2)Yawn BP, et al. Mayo Clin Proc. 2007;82:1341-1349.
3)国立感染症研究所 感染症流行予測調査グラフ 抗体保有状況の年度比較「水痘」
4)Izurieta HS, et al. Clin Infect Dis. 2017;64:785-793.
日本ペインクリニック学会 第52回大会
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