PI3K阻害薬alpelisib、HR+/HER2-進行乳がんでPFS約2倍(SOLAR-1)/ESMO2018

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/29

 

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんにおいて、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラントの併用療法が、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。HR+/HER2-乳がん患者の約40%がPIK3CA遺伝子変異を有する。日本も参加している第III相SOLAR-1試験の結果に基づき、フランス・パリ第11大学のFabrice André氏がドイツ・ミュンヘンにおける欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で報告した。

 SOLAR-1試験では、閉経後女性および男性の、HR+/HER2-進行乳がん患者(ECOG PS≦1、1ライン以上のホルモン療法歴あり、進行後の化学療法歴はなし)を対象に、PIK3CA遺伝子変異陽性もしくは陰性コホートでそれぞれ、alpelisib併用群(alpelisib 300mg/日+28日を1サイクルとして、フルベストラント500mgを1サイクル目の1日目と15日目、以降1日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+28日を1サイクルとして、フルベストラント500mgを1サイクル目の1日目と15日目、以降1日目に投与)に1:1の割合で無作為に割り付けた。層別化因子は、肝/肺転移の有無およびCDK4/6阻害薬による治療の有無。主要評価項目は、PIK3CA陽性コホートにおける無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、PIK3CA陰性コホートのPFS、両コホートの全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などである。

 主な結果は以下のとおり。

・全体で572例が組み入れられ、うち341例がPIK3CA陽性(併用群:169例、プラセボ群:172例)、231例が陰性(併用群:115例、プラセボ群:116例)であった。
PIK3CA陽性コホートにおけるPFS中央値は、alpelisib併用群11.0ヵ月に対しプラセボ群5.7ヵ月と併用群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85; p=0.00065、追跡期間中央値:20.0ヵ月)。
PIK3CA陰性コホートにおけるPFS中央値は、alpelisib併用群7.4ヵ月に対しプラセボ群5.6ヵ月で、あらかじめ定められたPoC(Proof of Concept)基準を満たさなかった(HR:0.85、95%CI:0.58~1.25)。
・測定可能なPIK3CA遺伝子変異陽性患者(262例)におけるORRは、併用群36% vs.プラセボ群16%であった(p=0.0002)。
・全患者の安全性プロファイルについて、Grade 3 以上の有害事象で多くみられたのは、高血糖(併用群37% vs.プラセボ群<1%)、皮疹(10% vs.<1%)であった。

 André氏は、「現段階でのフォローアップ期間は短く、長期的な生存利益があるかどうか確定的なことは言えない。しかし、PFSをプラセボ群と比較して約2倍に延長しており、新たな治療選択肢としての可能性があると言えるだろう。また、これまでのPI3K阻害薬がPI3K の4つのアイソフォーム全て(α、β、γ、δ)を標的としていたために毒性が高かったことと比較して、alpelisibはα特異的であることが特徴。本結果から、alpelisib併用群での有害事象の多くはGrade 1/2であり、Grade 3 以上がみられた高血糖と皮疹については、研究プロトコルに示された容量変更ならびにそれに伴う医学的介入によって管理された」と話している。

■参考
ESMO2018プレスリリース
SOLAR-1試験(Clinical Trials.gov)

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(ケアネット 遊佐 なつみ)