再発または転移性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)治療では、プラチナ製剤による化学療法後の2次治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ、ニボルマブの有効性が確認されており、本邦ではニボルマブが2017年3月に適応を取得している。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、HNSCCの1次治療におけるペムブロリズマブ単剤および、化学療法との併用療法が、抗EGFR抗体セツキシマブと化学療法の併用療法と比較して全生存期間(OS)を改善することが明らかになった。イェールがんセンターのBarbara Burtness氏が発表した第III相KEYNOTE-048試験の中間解析結果より。
KEYNOTE-048試験は、局所治療で治癒不能、全身治療歴のない再発/転移性の中咽頭、口腔、喉頭の扁平上皮がん患者(ECOG PS:0~1、PD-L1発現測定のための腫瘍組織があり、中咽頭のHPVステータス[p16]が既知)を対象に行われたオープンラベル無作為化試験。患者は、
ペムブロリズマブ単剤群(P群):3週おきにペムブロリズマブ200mgを35サイクルまで投与
ペムブロリズマブ+化学療法併用群(P+C群):3週おきにペムブロリズマブ200mg、カルボプラチンAUC5またはシスプラチン100mg/m2、5-FU 1,000mg/m2/日の4日間投与を6サイクル、その後はペムブロリズマブ200mgを35サイクルまで投与
セツキシマブ+化学療法併用群(E群):セツキシマブを初回のみ400mg/m2、その後は250mg/m2/週投与、3週おきにカルボプラチンAUC5またはシスプラチン100mg/m2、5-FU 1,000mg/m2/日の4日間投与を6サイクル、その後はセツキシマブ250mg/m2を毎週投与の3群に、ECOG PS 、PD-L1発現(TPS≧50%/<50%)、p16ステータス(陽性/陰性)を層別化因子として1:1:1の割合で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、CPS≧20、CPS≧1および全集団における全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は6ヵ月/12ヵ月PFS率、奏効率、安全性など、探索的項目は奏効期間(DOR)だった。今回は、PFSの最終解析結果、OSの中間解析結果が発表されている。
主な結果は以下のとおり。
・2015年4月~2017年1月までの間に882例の患者が組み入れられた(P群:301例/P+C群:281例/ E群:300例)。
・2018年6月13日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値はP群:11.7ヵ月/P+C群:13.0ヵ月/ E群:10.7ヵ月)。
・患者背景は、年齢中央値がP群:62歳/P+C群:61歳/E群:61歳、男性83%/80%/87%、ECOG PS1が全群で61%、p16陽性が21%/21%/22%、PD-L1発現はTPS ≥50%が22%/24%/22%であった。
・結果はP群 vs.E群とP+C群 vs.E群に分けて発表された。
[ペムブロリズマブ単剤群(P群)vs.セツキシマブ+化学療法併用群(E群)]
・OS中央値は、CPS ≧20の患者において14.9ヵ月 vs. 10.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.45~0.83、p=0.0007)、CPS≧1において12.3ヵ月 vs. 10.3ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.64~0.96、p=0.0086)といずれもP群で有意に改善した。
・PFS中央値は、CPS ≧20の患者において3.4ヵ月 vs. 5.0ヵ月(HR:0.99、95%CI:0.75~1.29、p=0.5)とP群で延長されなかった。試験計画に基づき、それ以上のPFS解析は行われなかった。
・CPS ≧20の患者において、ORR は23% vs. 36%、DOR中央値は20.9ヵ月 vs.4.2ヵ月、CPS≧1においてORR は19% vs. 35%、20.9ヵ月 vs.4.5ヵ月であった。
・Grade 3 以上の薬剤関連有害事象の発生率は17% vs. 69%であった。
[ペムブロリズマブ+化学療法併用群(P+C群) vs.セツキシマブ+化学療法併用群(E群)]
・中間解析時点でのOS中央値は、CPS ≧20およびCPS≧1の患者においてP+C群で有意な改善は見られなかった。全集団における解析では、13.0ヵ月 vs. 10.7ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.63~0.93、p=0.0034)とP+C群で有意に改善した。
・全集団におけるPFS中央値は、4.9ヵ月 vs. 5.1ヵ月(HR:0.92、95%CI:0.77~1.10、p=0.2)とP+C群で延長されなかった。
・全集団におけるORR は36% vs. 36%、DOR中央値は6.7ヵ月 vs.4.3ヵ月であった。
・Grade 3 以上の薬剤関連有害事象の発生率は71% vs. 69%であった。
Burtness氏は、「ペムブロリズマブを単剤で使うべきか、化学療法と併用するべきかはPD-L1発現に依存する可能性があり、現在この疑問に答えるための分析を行っている」と話している。また、ディスカッサントを務めたJean-Pascal Machiels氏(Cliniques universitaires Saint-Luc)は、ペムブロリズマブ単剤群と対照群のカプランマイヤー曲線が7ヵ月目付近で交差しており、その差がCPS≧1の患者においてよりクリアであることを指摘。「ペムブロリズマブ+化学療法併用群と対照群ではそのような差はみられない」と話した。
(ケアネット 遊佐 なつみ)