幻視は、認知症やパーキンソン病において発現する共通の症状であり、大幅な認知機能低下や機能低下と関連しているといわれているが、その最適なマネジメント戦略はよくわかっていない。英国・Papworth Hospital NHS Foundation TrustのPeter Swann氏らは、認知症やパーキンソン病における幻視の頻度や発現機序を再調査し、それらのマネジメントについてエビデンスベースで検討を行った。International Psychogeriatrics誌オンライン版2018年11月6日号の報告。
1980年1月~2017年7月までにPubMedに掲載された研究を対象とし、システマティックレビューを行った。検索キーワードは、「幻視(visual hallucinations)」「レビュー(review)」「認知症またはパーキンソン病(dementia OR parkinson*)」とした。
主な結果は以下のとおり。
・645件の研究の関連性についてスクリーニングし、最終的に89件の研究を抽出した。内訳は、メタ解析11件、ランダム化比較試験34件、その他の試験6件、関連レビュー多数であった。
・他の精神症状と区別し、幻視を評価していた研究は、6件のみであった。
・非定型抗精神病薬に関する研究は頻繁に行われていたが、パーキンソン病認知症におけるクロザピンを除き、その結果は不明瞭であった。
・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が、幻視の治療に役立つ可能性があるとのエビデンスが、いくつか報告されていた。
・全体として、ほとんどの治療に対するエフェクトサイズは小さく、長期フォローアップ研究はほとんど認められなかった。
・治療においては、注意深くリスクを評価し、頻繁に見直しを行う必要がある。また、多くの患者は、治療することなく改善が認められた。
・精神症状のグループ分けに一般的に使用される評価尺度を用いた幻視に関する研究データが不十分であった。
著者らは「幻視に関する特定の評価尺度や分析可能な他の評価尺度が欠如しており、現在の有効性や短期フォローアップによる小規模な研究に限定されていることから、将来における本分野の研究は重要である」としている。
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(鷹野 敦夫)