ペムブロリズマブのMSI-H固形がんが国内承認…臓器横断的がん治療が現実に/MSD 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2018/12/25 MSD株式会社は、2018年2月12日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。この適応拡大は医薬品の条件付き早期承認制度の適用を受けていた。 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)とは、傷ついたDNAを修復する機能が低下していることを示すバイオマーカー。細胞は、DNA複製時に自然に起こる複製ミスを修復する機能をもっているが、この修復機能の低下によって、DNAの繰り返し配列(マイクロサテライト)が正常な細胞と異なる状態になっていることをマイクロサテライト不安定性(MSI)と呼び、このMSIが高頻度に起きている現象を高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)と呼ぶ。 MSI-High固形がんは、大腸がん、胃がんや膵臓がんといった消化器系のがんのほか、子宮内膜がんや卵巣がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、甲状腺がんなどでも報告されている。大腸がんの約6%、子宮内膜がんの約17%にMSI-High固形がんがみられたとの報告がある。 この適応拡大にあたっては、治療歴を有するMSI-High固形がんを対象とした2つの国際共同第II相試験において、ペムブロリズマブの有効性および安全性が示された。1つは、治療歴を有するMSI-Highの結腸・直腸がん患者61名を対象にしたKEYNOTE-164試験(コホートA)。この試験での奏効率(ORR)は27.9%(95%CI:17.1~40.8)であった。対象者の57.4%に副作用が認められ、主な副作用(10%以上)は、関節痛16.4%、悪心14.8%、下痢13.1%、無力症11.5%およびそう痒症11.5%であった。もう1つは、治療歴を有するMSI-Highの結腸・直腸以外の固形がん患者94名を対象にしたKEYNOTE-158試験。この試験でORRは37.2%(95%CI:27.5~47.8)であった。対象者の61.7%に副作用が認められ、主な副作用(10%以上)は、疲労11.7%およびそう痒症11.7%であった 共通のバイオマーカーに基づいてがん種横断的に効能・効果(適応)を有するがん治療薬は、国内初となる。 なお、ペムブロリズマブの適応判定を目的としたMSI-Highを検出するためのコンパニオン診断薬として、株式会社ファルコバイオシステムズの「MSI検査キット(FALCO)」が承認されている。 ■関連記事 ペムブロリズマブ、臓器横断的ながんの適応取得:FDA 小細胞肺がんへのペムブロリズマブ単独投与、PD-L1陽性例でより高い効果(KEYNOTE-158)/ASCO2018 いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか MSI-H固形がんへのペムブロリズマブ、日本人サブ解析結果(KEYNOTE-158)/癌治療学会 いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか (ケアネット 細田 雅之) 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 ペムブロリズマブのMSI-High固形がんに対する第II相試験(KEYNOTE-164、158統合解析)/ESMO2019 医療一般(2019/10/25) 高リスク早期TN乳がんへの術前・術後ペムブロリズマブ追加、日本人解析結果(KEYNOTE-522)/日本乳癌学会 医療一般(2022/07/13) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 小児がん、定期的な症状スクリーニングで苦痛な症状が改善/JAMA(2024/11/21) 米国民の幸福度、国内格差を人間開発指数で解析/Lancet(2024/11/21) エンパグリフロジン投与終了後もCKDの心・腎保護効果が持続、レガシー効果か?(解説:栗山哲氏)(2024/11/21) 心臓MRIによるLGEはLVEFより拡張型心筋症のリスクをより良く予測する(解説:佐田政隆氏)(2024/11/21) 肺動脈性肺高血圧症治療剤ユバンシ配合錠が発売/ヤンセン(2024/11/21) TN乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、販売開始/ギリアド(2024/11/21) ROS1陽性NSCLCへの新たな選択肢レポトレクチニブ、その特徴は?/BMS(2024/11/21) 低リスク肺塞栓症がん患者のVTE再発、リバーロキサバン18ヵ月vs. 6ヵ月(ONCO PE)/AHA2024(2024/11/21) 大腸がん検診、現時点では血液検査よりも大腸内視鏡検査が優れる(2024/11/21) うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法、安定後は継続または中止?(2024/11/21) [ あわせて読みたい ] IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01) 旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29) エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17) 今考える肺がん治療(2022/08/24) あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09) 「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回(2022/07/08)