入院時の夜間絶食は、患者の筋力にどの程度影響を及ぼすのか。今回、ブラジル・Universidade Federal de Mato GrossoのWesley Santana Correa-Arruda氏らにより、成人患者を対象とした前向き臨床試験が行われた。その結果、入院中の夜間絶食により、とくに低栄養、栄養失調および高齢の患者における筋肉機能が損なわれる可能性が示された。Einstein誌2019年1月14日号に掲載。
本試験は、2015年5月~2017年6月にHospital Universitario Julio Muller(ブラジル、Mato Grosso)へ入院した221例の患者を対象に行われた。平均年齢は56±16歳で、60歳以上の高齢者は93例(42.1%)、非高齢者は128例(57.9%)。参加者のうち119例(53.8%)は男性で、28例(12.7%)はがん治療を受け、193例(87.3%)は臨床治療を受けていた。
栄養状態は、良好(SGA-A)が38例(17.2%)、中等度の栄養不良(SGA-B)が69例(31.2%)、そして高度の栄養不良(SGA-C)が114例(51.6%)だった。
主な結果は以下のとおり。
・夜間絶食後に評価された空腹時の平均握力(31.1±8.7kg)は、朝食後の平均握力(31.6±8.8kg、p=0.01)、および累積平均握力(31.7±8.8kg、p<0.001)と比較して小さかった。
・夕食摂取時と夜間絶食時におけるそれぞれの空腹時の平均握力を比較すると、夕食摂取量100%の患者(33.2±9.1kg vs.30.4±8.4kg;p=0.03)および50%超の患者(32.1±8.4kg vs.28.6±8.8kg;p=0.006)では、夕食摂取時のほうが大きかった。一方、夕食摂取量50%以下および摂取量0の患者では、空腹時の平均握力の変化は見られなかった。
・多変量解析の結果、一晩の夜間絶食後において、夕食摂取量50%以下ではオッズ比[OR]=2.17(95%信頼区間[CI]:1.16〜4.06;p=0.018)、高度な栄養不良ではOR=1.86(95%CI:1.06〜3.26;p=0.028)、高齢(60歳以上)ではOR=1.98(95%CI:1.12〜3.50;p=0.019)であり、それぞれの因子は、夜間絶食後における空腹時の有意な握力低下に対する独立した要因であることが示された。
以上の結果より、たとえ一晩でも、夜間絶食は空腹時の筋力を低下させ、栄養が不足している患者、とくに高齢者ではリスクが高いことが示された。しかし、筋力は食事摂取後に回復する可能性がある。これに対し、筆頭著者は「本研究では、夜間絶食が患者の筋力を低下させるリスクを示したが、夜間のエネルギー消費が日中よりも低いことはよく知られている。日中の絶食は、夜間絶食と比較して、より有害であることを意味する」とコメントしている。
(ケアネット 堀間 莉穂)