『Pokemon GO(ポケモンGO)』は、位置情報機能を利用し、現実世界のさまざまな場所でポケモンを捕まえて楽しむ、スマートフォン向けゲームアプリである。2016年夏の発売以降、いまだに根強い人気のあるこのゲームの意外な効果が、東京大学の樋野 公宏氏らの研究で明らかになった。
現在、スマートフォンは健康アウトカム改善ツールとしての役割が期待され、とくに身体活動(PA)を増加させる可能性への関心が寄せられている。ポケモンGOに関するいくつかの研究ではゲーム発売前後の歩数が比較されているが、試験期間が短く、若者だけが対象となっている。今回、研究者らは、ポケモンGOの発売前後における、中高年の利用者と非利用者の歩数の差を確認し、歩数は発売後7ヵ月までの期間で多いことを明らかにした。Journal of Medical Internet Research誌2019年2月5日号掲載の報告。
対象は40歳以上の利用者(46例)と非利用者(184例)で、性別、年齢、およびPAレベルをマッチさせた。参加者は、無作為に送られたアンケートに答えた横浜市民で、市から無料の歩数計が与えられた。また、プレイ状況はアンケートを通じて確認し、プレイ状況によるポケモンGO発売前後の歩数変化は、二元配置反復測定分散分析(Two Way Repeated Measures ANOVA)で調査。ゲーム発売前の1ヵ月間の歩数と発売8ヵ月後の歩数を比較した。さらに、性別、年齢、PAレベル、およびsubjective health statusに応じたサブグループ解析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・利用者と非利用者の平均年齢±SDは、それぞれ56.5±9.9歳、57.3±9.6歳だった。
・利用者と非利用者のベースラインの平均歩数±SDは、それぞれ7,641.8±2,754.5歩、7,903.3±2,674.7歩だった。
・両側検定によると、ベースラインの歩数には、年齢で有意差はなかった。
・すべての対象を分析したところ、プレイ状況と時間による相互作用は、発売後8ヵ月のうち3ヵ月間で有意だった。
・サブグループ解析の結果、相互作用はそれぞれ有意(男性:3ヵ月間、55~64歳のグループ:7ヵ月間、労働者:2ヵ月間、PAレベルが活発なグループ:4ヵ月間、主観的に健康な参加者:2ヵ月間)で、利用者は55歳未満の男性、労働者、活動的、そして主観的に健康である可能性がより高かった。
・ほかのサブグループで相互作用が有意であったのは、たった1ヵ月間だった。
・利用者群は冬季の間でも歩数を維持したが、非利用者では歩数は減少した。
(ケアネット 土井 舞子)