2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故の災害関連体験と原子力発電所員の不眠症との関連、および各不眠症状への長期的な影響について、順天堂大学の野田(池田) 愛氏らが調査を行った。Sleep誌オンライン版2019年3月11日号の報告。
対象は、2011~14年までの3年間にアテネ不眠尺度を用いたアンケートおよび2011年の災害関連体験に関するアンケート調査に回答した発電所員1,403例。災害関連体験と不眠症との縦断的な関連を調査するため、混合効果ロジスティック回帰モデルを用いた。また、不眠症のサブタイプ(入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒)に対する災害関連体験の潜在的な影響について、パス分析を用いて調査した。
主な結果は以下のとおり。
・家族や同僚の死亡を除くすべての災害関連体験は、不眠症と有意な関連が認められた。
・これらの外傷性曝露の大半は、時間に依存せず、不眠症リスクと関連していることが示唆された。
・しかし、生命を脅かす危険を経験した影響は、時間とともに減少した。
・パス分析では、生命を脅かす危険または爆発の目撃といった経験をした発電所員は、入眠の妨げとなる不安な場面を思い起こすと示唆された。
・一方、早朝覚醒は、人生の不安定さと関連している可能性が示唆された。
・社会的な差別や中傷が、3つの不眠症サブタイプと関連しており、生命を脅かす危険、財産の喪失、同僚の死亡といった他の経験にも影響されることが認められた。
著者らは「本調査結果より、災害関連体験を有する労働者に対して包括的な心理社会的支援が必要である」としている。
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