短時間作用型β1選択的遮断薬ランジオロール(商品名:オノアクト)に対し、2019年3月に「生命に危険のある下記の不整脈で難治性かつ緊急を要する場合:心室細動、血行動態不安定な心室頻拍」の効能が追加承認された。
その根拠となった後期第II相/第III相試験[J-LandII study]の結果が、第83回日本循環器学会学術集会(2019年3月29~31日)で発表された。発表者は、東京女子医科大学循環器内科、志賀剛氏。
ランジオロールの投与量は10μg/kg/分以下が90%
J-LandII studyは、III群抗不整脈薬を使用しているにも関わらず血行動態が不安定な心室頻拍(VT)/心室細動(VF)を呈する患者を対象に、ランジオロールの有効性と安全性を検討した多施設共同非盲検非対称試験である。主要評価項目には、有効性評価期間(1-49時間)における血行動態不安定なVTあるいはVFの非再発率が設定された。
対象患者を電気ショックなどにより洞調律復帰した後、ランジオロール 1μg/kg/分にて静脈内持続投与を開始し、用量設定期間(0~1時間)は10μg/kg/分まで、有効性評価期間(1~49時間)は40μg/kg/分まで増量可能とした。ランジオロールの平均投与量は、用量設定期間4.3±1.7μg/kg/分、必須投与期間(0-49時間) 8.5±5.2μg/kg/分であった。また、必須投与期間終了時(49時間)におけるランジオロールの投与量は、10μg/kg/分未満が18例(62%)、10μg/kg/分が8例(28%)、10μg/kg/分以上が3例(10%)だった。
39の登録症例のうち、安全性解析対象には29例、有効性解析対象には27例が用いられた。
ランジオロール投与によるVT/VFの非再発率は約80%
ランジオロールの主要評価項目である「有効性評価期間(1-49時間)における血行動態不安定なVTあるいはVFの非再発率」は、78%であった。演者の志賀氏は、VT/VFの非再発率は「当初45~65%と予測していたが、約80%という数字は予想をはるかに上回る素晴らしい成績だ」と強調した。なお、試験開始前の閾値有効率は20%に設定されていた。
本試験において有害事象は、29例中21例(72.4%)、副作用は10例(34%)に認められた。主な副作用は低血圧6例(21%)であったが、いずれもランジオロールの減量または中止により回復したという。
(ケアネット 鈴木 渉)