抗うつ薬ミルタザピンの速効性と費用対効果との関連

これまでの研究で、ミルタザピンは他の抗うつ薬と比較し、効果発現が速い特徴を有するといわれている。いくつかの研究において、費用対効果が評価されているが、その際、早期寛解については考慮されていなかった。慶應義塾大学の佐渡 充洋氏らは、この研究ギャップに対処するため、正確な臨床データを用いることで、日本におけるミルタザピンの費用対効果について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年4月11日号の報告。
週ごとの推移確率を反映するためのマルコフモデルを開発した。マルコフ周期は、1週間に設定した。臨床パラメータは、主にメタ解析から抽出し、費用関連データは、行政報告から抽出した。費用対効果は、確率感度分析に基づいて推定された質調整生存年の増分費用対効果比(incremental cost effectiveness ratios:ICER)により評価した。ICERは、2、8、26、52週で推定した。
主な結果は以下のとおり。
・重症うつ病のICERは、87万2,153円~177万2,723円であった。ICERの閾値を500万円とした場合、費用対効果でミルタザピンが効果的な割合は、0.75~0.99の範囲であった。
・中等度うつ病のICERは、235万6,499円~477万145円であった。ICERの閾値を500万円とした場合、費用対効果でミルタザピンが効果的な割合は、0.55~0.83の範囲であった。
著者らは「ミルタザピンの効果発現の速さを考慮すると、日本国内においてとくに重度のうつ病や早期治療では、SSRIと比較し費用対効果が高いと考えられる。しかし、本研究の限界として、ミルタザピンと各SSRIを比較していない点、併用療法を考慮していない点が挙げられる」としている。
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(鷹野 敦夫)
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