HER2陽性の転移・再発乳がん患者の3次治療における、HER1/2/4阻害薬neratinib+カペシタビン併用療法とラパチニブ+カペシタビン併用療法との比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表された。これはオープンラベルの第III相無作為化比較試験である。
試験デザイン
・対象:中央判定で確認されたHER2陽性の転移・再発乳がん患者で、前治療として抗HER2療法を2ライン以上受けている患者(症状のない脳転移症例も許容)
・試験群:neratinib240mg/日(経口)+カペシタビン750mg/m2×2回/日(経口)の併用療法(neratinib併用群)
・対照群:ラパチニブ1,250mg/日(経口)+カペシタビン1,000mg/m2×2回/日(経口)の併用療法(ラパチニブ併用群)
neratinib/ラパチニブは連日投与、カペシタビンは2週間投与後に1週間休薬、これを1コースとして繰り返し投与
neratinib併用群では1コース目にロペラミドを投与
・評価項目:[主要評価項目]中央判定による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)
[副次評価項目]主治医判定によるPFSと奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、脳転移治療までの期間、安全性、患者報告QOL
neratinib併用群のPFSは統計学的な有意差をもって良好
主な結果は以下のとおり。
・621例が登録され、neratinib併用群に307例、ラパチニブ併用群に314例が割り付けられた。
・中央判定によるPFSについて、12ヵ月PFS率はneratinib併用群29%、ラパチニブ併用群15%であり、ハザード比(HR):0.76(95%信頼区間[CI]:0.63~0.93、p=0.0059)と統計学的な有意差をもってneratinib併用群のほうが良好であった。
・OS中央値はneratinib併用群24.0ヵ月、ラパチニブ併用群22.2ヵ月であった(HR:0.88、95%CI:0.72~1.07、p=0.2086)。
・ORRはneratinib併用群33%、ラパチニブ併用群27%(p=0.1201)で、CBRはneratinib併用群45%、ラパチニブ併用群36%(p=0.0328)、累積の脳転移発生率はneratinib併用群22.8%、ラパチニブ併用群29.2%(p=0.043)であった。
・DOR中央値は、neratinib併用群8.5ヵ月、ラパチニブ併用群5.6ヵ月であった(HR:0.50、95%CI:0.33~0.74、p=0.0004)。
・両群の治療関連有害事象(TRAE)発現状況はおおむね同等であったが、Grade3以上の下痢がneratinib併用群24%、ラパチニブ併用群13%とneratinib併用群で高率であった。しかしTRAEによる治療中止の割合はneratinib併用群10.9%、ラパチニブ併用群14.5%とneratinib併用群で低かった。
(ケアネット)