Stage II大腸がんにおける術後補助化学療法の有効性を検討したSACURA試験(主任研究者:東京医科歯科大学 杉原 健一氏)の付随研究として、簇出(budding)の予後予測因子、補助化学療法の効果予測因子としての有用性を評価した解析結果を、防衛医科大学校の上野 秀樹氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年6月10日号に掲載。簇出は、国際対がん連合(UICC)が腫瘍関連の予後因子として挙げている因子であり、2016年のInternational Tumor Budding Consensus Conference(ITBCC2016)において国際的評価基準が定義された。
簇出の評価によって術後補助化学療法の適応となる対象を適切に選別
SACURA試験は、Stage II大腸がんを対象として、経口テガフール-ウラシル(UFT)1年間投与による術後補助化学療法群と手術単独群とを比較した大規模な無作為化試験である。今回の付随研究では、2006~10年の間に123施設からSACURA試験に登録されたStage II大腸がん1,982例のうち、991例の病理標本を収集した。簇出は、後にITBCC2016に採用された評価基準に基づいた中央判定によって3つのグレード(BD1/BD2/BD3)に診断され、前向きに記録された。5年間の患者登録完了後に主研究で収集した臨床病理学的データおよび予後データと統合し、解析を行った。
簇出の予測因子としての有用性を評価した主な解析結果は以下のとおり。
・991例のうち、BD1(簇出が0~4個)が376例、BD2(同5~9個)が331例、BD3(同10個以上)が284例であった。5年無再発生存率(RFS)はそれぞれ90.9%、85.1%、74.4%(p<0.001)で、深達度T4の部分集団解析では、RFSの分かれ方が顕著であった(86.6~53.3%)。
・簇出のグレードは、肝臓、肺、リンパ節、腹膜における再発と有意に相関した(p<0.01~0.001)。
・多変量解析において、簇出と壁深達度は、独立した予後不良因子であった。Harrellのc統計量(c-index)に基づくと、これらの2因子はRFSの予測モデルの分別能を有意に改善した。
・BD2、BD3の部分集団いずれにおいても、統計学的に有意差は無いものの、手術単独群に比べて術後補助化学療法群で5年累積再発率が約5%良好であった。
これらの結果から、研究グループは「Stage II大腸癌においては、ITBCC2016基準による簇出をルーチンに評価すべきであり、これにより術後補助化学療法の適応となる対象の適切な選別と予後向上が期待される」としている。
(ケアネット 金沢 浩子)