がん患者へ明確な予後を知らせる効果に関する知見が示された。聖隷三方原病院 緩和ケアチームの森 雅紀氏らは、日本人乳がん女性患者に対して、予後の明確な開示の有無という点で異なる2つのビデオ(患者と医師のコミュニケーション場面を撮影したもの)を見せ、患者が抱く不確実性や不安、満足感などに変化が認められるかを無作為化試験により調べた。その結果、明確な予後の開示はそれらのアウトカムを改善することが示されたという。結果を踏まえて著者は、「がん患者に予後について質問をされたら、医療従事者は、その要望を尊重すべきであり、適切であれば明快に話し合うことが推奨されるだろう」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年6月17日号掲載の報告。
研究グループは、「アジアでは臨床において、進行がん患者への予後は、非開示が典型的なままである。予後を伝える重要性が世界的にますます認識されるようになっているが、アジア人の進行がん患者に対する、明確な予後の開示が及ぼす影響については、ほとんどわかっていない」として、がん再発を伴う患者に対する、明確な予後の伝達効果を、無作為化ビデオ描写試験にて調べた。
根治手術を受けた日本人乳がん女性に対して、再発難治乳がんを有する患者と患者のがん担当医との予後に関するコミュニケーションを撮影したビデオを見せた。ビデオは、明確な予後の開示の有無のみが異なる2つのパターンが用意された。
主要評価項目は、被験者が抱く不確実性(Uncertainty、範囲:0~10)である。副次評価項目は、不安(State-Trait Anxiety Inventory-Stateで測定、範囲:20~80)、満足度(Patient Satisfaction Questionnaire、範囲:0~10)、自己効力感(Self efficacy、範囲:0~10)、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について話し合う意欲(範囲:1~4)などであった。
主な結果は以下のとおり。
・合計105例の女性が参加した(平均年齢53.8歳)。
・被験者の不確実性のスコアは、予後の開示が多いビデオを見た後のほうが、少ないビデオを見た後よりも有意に低下した(それぞれの平均スコアは5.3 vs.5.7、p=0.032)。
・同様に、満足度は上昇し(それぞれ5.6 vs.5.2、p=0.010)、不安は増加しなかった(State-Trait Anxiety Inventory-Stateスコアの変化はそれぞれ0.06 vs.0.6、p=0.198)。
・一方で、自己効力感(それぞれ5.2 vs.5.0、p=0.277)、ACPについて話し合う意欲(それぞれ2.7 vs.2.7、p=0.240)については、有意な変化はみられなかった。
(ケアネット)