インスリン療法開始時の選択肢にも有用ーゾルトファイ配合注

提供元:ケアネット

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公開日:2019/10/04

 

 インスリン療法時の低血糖回避が血糖コントロール不良を招き、心疾患の発症に影響を及ぼすことがある。このようなジレンマを新たな薬剤が解決してくれるかもしれない-。

 2019年9月26日、ノボノルディスクファーマがゾルトファイ配合注フレックスタッチの発売を記念してプレスセミナーを開催。綿田 裕孝氏(順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学 教授)が「インスリン デグルデク/リラグルチド(IDegLira):2型糖尿病治療の新たな選択肢」と題して、新薬の有用性について語った。

新たな配合剤の適応やメリットは?
 今回発売されたIDegLira(商品名:ゾルトファイ配合注)は、インスリンとGLP-1受容体作動薬を組み合わせた製剤で、インスリン療法が適応となる2型糖尿病に投与可能である。1日1回の用法で2剤が同時投与でき、“注射時刻は原則として毎日一定とする”という条件を守れば、患者のライフスタイルに応じた投与スケジュールを作成できる。これに対し、綿田氏は「患者QOLやアドヒアランス向上にも寄与する」と、コメントした。

持効型インスリン/GLP-1配合剤はこれまでの治療不安を払拭できるか
 2型糖尿病のインスリン治療には、「低血糖」「体重増加」「血糖コントロール」の3つのアンメットメディカルニーズが存在する。低血糖を起こすと、救急搬送や入院にかかる費用だけではなく、事故や就労不能、業務効率低下といった社会経済にも影響を及ぼし、さらにはHbA1cの目標値達成を阻害する。そして、インスリン治療がもたらす体重増加がHbA1cの目標達成の障壁となり、Basalインスリンを投与する2型糖尿病患者の半数以上はHbA1cの目標値を達成していない。

 このような問題が生じることから、インスリン治療に抵抗を示す医師も少なくない。綿田氏が示したデータによると、医師の理想より、実際にインスリン治療を開始する時期は遅れており、患者が実際にインスリン治療を医師から薦められた際の平均HbA1cは9.6%であった1)

GLP-1受容体作動薬との組み合わせで副作用軽減
 GLP-1受容体作動薬は血糖依存性にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制するため、インスリンと比べても低血糖リスクは少ない。心血管疾患リスク低下や体重減少も報告されていることから、GLP-1受容体作動薬の併用はインスリン治療のデメリット改善につながる。GLP-1受容体作動薬を単独で投与すると胃腸障害(悪心、嘔吐、下痢)の出現頻度は高いが、「IDegLiraは10ドーズにリラグルチドとして0.36mg含有と少量のため、徐々に用量を増加していくと、単独で使用するよりも副作用の出現は低いと考えられる」と、同氏は述べた。

 日本人を対象としたIDegLiraの大規模臨床試験(DUAL I JAPAN試験2)、DUAL II JAPAN試験3))結果によると、低血糖リスクや体重増加、悪心などのリスクを回避しながらHbA1cの変化量および平均値の改善を達成した。これを踏まえて同氏は「インスリン製剤、GLP-1受容体作動薬はそれぞれの課題を有しているが、併用することでお互いを補い合う作用が期待できる治療法である。ほかのインスリン療法と比較しても好ましい治療法であることがメタ解析からも示唆された」と述べ、「IDegLiraはBasalインスリンからの治療強化だけではなく、新規にインスリン療法を開始する際の選択肢にもなる」と締めくくった。

(ケアネット 土井 舞子)