スペイン・Vall d’Hebron 大学病院のJosep Tabernero氏は、転移のあるBRAF V600E変異大腸がんに対する、BRAF阻害薬エンコラフェニブ、MEK阻害薬ビニメチニブ、抗EGFR抗体セツキシマブの3剤併用療法を検証した無作為化非盲検の第Ⅲ相試験BEACON CRCの結果を発表。この3剤併用療法あるいはエンコラフェニブとセツキシマブの併用療法は、従来のFOLFIRI療法あるいはイリノテカンにセツキシマブを加えた治療法に比べ、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)を有意に改善すると報告した。
BRAF V600E変異型は転移を有する大腸がんの10~15%に認められ、予後不良因子とされている。ただ、こうした症例ではBRAFのみを阻害しても効果は限定的で、逆にEGFRに急なフィードバックがかかり、MAPKシグナル伝達経路を活性化し、がん細胞増殖が促進されるとされている。BRAF阻害薬のエンコラフェニブ、MEK阻害薬のビニメチニブは共にMAPKシグナル伝達経路での酵素を阻害する薬剤である。
・対象:1次治療あるいは2次治療後に進行したPS 0~1のBRAF V600E変異型を有し、BRAF阻害薬、MEK阻害薬、EGFR阻害薬のいずれの治療も受けたことがない転移を有する大腸がん患者665例
・試験群1(3剤療法):エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブ(224例)
・試験群2(2剤療法):エンコラフェニブ+セツキシマブ(220例)
・対照群:FOLFIRI療法+セツキシマブまたはイリノテカン+セツキシマブ(221例)
・評価項目:
[主要評価項目]3剤療法vs.対照群でのOS、盲検化中央判定でのORR
[副次評価項目]2剤療法vs.対照群、3剤療法vs. 2剤療法でのOS、無増悪生存期間(PFS)、ORR、安全性
主な結果は以下のとおり。
・OS中央値は3剤療法群が9.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.0~11.4)、対照群が5.4ヵ月(95%CI:4.8~6.6)であった(ハザード比[HR]:0.52、95%CI:0.39~0.70、両側検定p<0.0001)。
・2剤療法のOS中央値は8.4ヵ月(95%CI:7.5~11.0)であった(HR:0.60、95%CI:0.45~0.79、両側検定p=0.0003)。
・PFS中央値は3剤療法群が4.3ヵ月(95%CI:4.1~5.2)、対照群が1.5ヵ月(95% CI:1.5~1.7)であった(HR:0.38、95%CI:0.29~0.49、両側検定p<0.0001)。
・2剤療法群のPFS中央値は4.2ヵ月(95%CI:3.7~5.4)であった(HR:0.40、95%CI:0.31~0.52、両側検定p<0.0001)。
・無作為化割り付けが最初に行われた331例でのORRは3剤療法群が26%、2剤療法が20%、対照群が2%(対照群との比較で3剤療法、2剤療法は共にp<0.0001)であった。
・全有害事象(AE)発現率は3剤療法群が98%、2剤療法が98%、対照群が97%、Grade3以上のAE発現率はそれぞれ58%、50%、61%であった。
・Grade3以上の主なAEは3剤療法群が下痢、腹痛、ヘモグロビン値上昇、2剤療法が腸閉塞、疲労感、ヘモグロビン値上昇、対照群が下痢、腹痛、無力症であった。
・QLQ-c30によるQOL評価では3剤療法と2剤療法はほぼ同等だった。
この結果についてTabernero氏は3剤療法は2剤療法を超える臨床的に妥当なアドバンテージを得られる可能性が示唆され、有害事象も管理可能であると指摘。「既治療のBRAF V600E変異型の転移を有する大腸がんに対する新たな標準治療になりえる」と述べた。
(ケアネット)