EGFR変異陽性のNSCLCでは、第1、2世代EGFR-TKIの1次治療により30~60%の患者でT790M変異による耐性が発現する。近畿大学の西尾 和人氏らは、EGFR変異陽性のNSCLCでのラムシルマブ・エルロチニブ併用(以下、RAM+ERL)の効果を検証した第III相RELAY試験の結果から、この2剤併用がEGFRの2次変異であるT790M変異の発生を遅延させる可能性があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。
RELAY試験は未治療のEGFR変異陽性進行NSCLC患者(449例)を対象に、RAM+ERLとプラセボ+エルロチニブ(以下、PL+ERL)を比較した第III相国際共同二重盲検無作為化試験で、併用群における無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が報告されている(HR:0.591、p<0.0001)。T790M発現については、PD後30日後のRAM+ERL群と対照群で差はみられていない(43%対47%)。
今回の発表は、EGFR-TKI耐性のメカニズムとRAM+ERLがT790Mおよび他の獲得耐性関連変異にどう影響するかを調査するために行われた日本人患者における探索的研究。リキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からEGFR変異の状況をdroplet digital PCR(ddPCR)を用いて解析した。血漿サンプル採取は、治療開始前、4サイクル目、13サイクル目以後6サイクルごと53サイクルまで、そして治療中止から30日後に行われた。
日本人患者は、バイオマーカーPopulation1(以下、Population1)とバイオマーカーPopulation2(以下、Population2)に分けられた。Population1はベースライン(T790M変異なし)と進行後30日の結果がある42例(RAM+ERL群:19例、PL+ERL群:23例)で、Population2は進行後30日後にEGFR活性化変異を検出した23例(RAM+ERL群:8例、PL+ERL群15例)であった。
主な結果は以下のとおり。
・日本人患者全体(211例)のPFSのハザード比(HR)は0.61(95%CI:0.43~0.86)、Population1のPFSのHRは0.61(95%CI:0.33~1.15)、Population2のHRは0.87(95%CI:0.35~2.15)であった。
・治療中止後30日でのT790M変異陽性率はPopulation1においてはRAM+ERL群26%、PL+ERL群30%(p=1.0)。Population2においてはそれぞれ62%対40%(p=0.4)で両群間に差はなかった
・病勢進行患者に対するT790M変異陽性患者の割合推移は、12サイクル目RAM+ERL群17%(1/6例)、PL+ERL群33%(3/9例)、24サイクル目RAM+ERL群11%(1/9例)、PL+ERL群38%(6/16例)、53サイクル目RAM+ERL群26%(5/19例)、PL+ERL群30%(7/23例)と、RAM+ERL群ではサイクル数が多くなってから増加してくる傾向がみられた。
この結果から、筆者はエルロチニブへのラムシルマブ併用はT790M変異の発生を遅延させている可能性があると述べている。
(ケアネット)