脳卒中リスクを有する心房細動患者において、ビタミンK拮抗薬(VKA)治療開始後1ヵ月のPT-INR連続測定値を使用したAIによる新予後予測モデルが、至適範囲内時間(TTR)による予測と比較して高い精度を有する可能性が示唆された。東海大学の後藤 信哉氏らが、GARFIELD-AFレジストリのデータにより検討した。Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother誌オンライン版2019年12月10日号掲載の報告。
GARFIELD-AFレジストリは、脳卒中リスクのある心房細動患者における抗血栓療法のアウトカムを検討する、最大規模の国際的な多施設共同前向き観察研究。今回、研究者らは同レジストリのデータにおける、登録後30日以内のPT-INRの連続測定値を用いて、31日目から1年までの臨床転帰を予測するための新たなAIモデルを開発した。従来の多くの臨床リスク層別化モデルは、連続測定ではなく単一時点での測定に基づいているが、AIは多次元データセットから1次元の結果を予測することができる。このモデルは、長・短期記憶と1次元の畳み込み層を含む多層ニューラルネットワークで構築されている。
本解析では、VKAで治療され、処方が確認されてから最初の30日間に少なくとも3回PT-INRの測定が行われた、AFと新たに診断された患者が対象。アウトカムとして、31~365日の間に発生した大出血、脳卒中/全身性塞栓症(SE)、全死因死亡が用いられた。
主な結果は以下の通り。
・ニューラルネットワークは、治療開始後0〜30日以内のPT-INR測定値によりトレーニングされ、解析コホート(3,185例)で31〜365日にわたって臨床アウトカムが得られた。
・AIモデルの精度は、検証コホートで評価された(1,523例)。
・大出血、脳卒中/SE、および全死因を予測するためのAIモデルのC統計量は、それぞれ0.75、0.70、および0.61であった。TTRでは、有意な差がみられなかった。
(ケアネット)