中国湖北省・武漢市で発生し、急速に拡大している新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症を巡り、中国・香港大学李嘉誠医学院のJoseph T Wu氏ら研究グループは、2019年12月以降の感染の広がりについて予測。1月25日時点で、武漢市および周辺都市における感染者数は約7万6,000人に上ると見られる推計値を発表した。なお、中国保健当局が2月4日付で公表した中国国内の感染者数は約2万400例で、本研究の推計値とは3倍超の大きな開きがある。Lancet誌オンライン版1月31日号掲載の報告。
研究グループは、中国疾病管理予防センターが公表した症例報告数を基に、2019年12月1日~20年1月25日の間に、武漢市から国内外にさまざまな交通機関を利用して移動した人の追跡データを分析、移動先で確認された症例数からモンテカルロ法によって推定値を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・推定基本再生産数は2.68(95%信頼区間[CI]:2.47~2.86)。
・感染者数が2倍となるのに要したのは6.4日であった(95%CI:5.8~7.1)。
・これらの計算から、武漢の患者数は1月25日時点で7万5,815人と推定(95%CI:3万7,304~13万330)。
・武漢以外の主要都市でも局所的な感染の流行が見られ、重慶461例(95%CI:227~805)、北京113例(95%CI:57~193)、広州111例(95%CI:56~191)、上海98例(95%CI:49~168)、深セン80例(95%CI:40~139)などと推定。
著者らは、「人口レベルおよび個人レベルの両方で実質的かつ公衆衛生的な介入が即座に実施されなければ、中国と密接な交通輸送手段を有する海外の大都市においても、今後アウトブレイクの中心となる可能性がある」と述べている。
(ケアネット 鄭 優子)