中国・深セン市の家族7人における、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染および臨床経過が報告された。香港大学のJasper Fuk-Woo Chan氏らによる、Lancet誌2月15日号(オンライン版1月24日号)掲載の報告。
2019年12月29日から2020年1月4日まで武漢市に滞在した家族6人を、1月10日から登録。うち5人で感染が確認された。さらに、旅行していないもう1人において、家族のうち4人と数日間接触した後、SARS-CoV-2陽性が確認された。本研究では、同家族の疫学的、臨床的、実験的、放射線学的、および微生物学的所見を報告している。
各人のベースライン特性と検査結果は以下の通り(疾患歴/検査結果)。
患者1(母親、65歳):高血圧および治療済の良性腫瘍/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性
患者2(父親、66歳):高血圧/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性
患者3(娘、37歳):なし/RT-PCR陰性、CTスキャン陽性
患者4(義理の息子、36歳):慢性副鼻腔炎/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性
患者5(孫・男児、10歳):なし/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性
患者6(孫・女児、7歳):不明/RT-PCR陰性、CTスキャン陰性
患者7(患者4の母・旅行歴なし、63歳):糖尿病/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性
主な疫学的・臨床的・放射線学的・微生物学的特徴は以下の通り。
・家族の誰も武漢の市場や動物への接触はなかったが、患者1~6は武漢に住む親類と滞在中毎日接触し、患者1と患者3は武漢の病院を訪れていた。
・患者1~4は発熱、上気道または下気道症状、下痢、これらの組み合わせを曝露(武漢到着)後3~6日に示した。患者5は無症候性であった。
・60歳以上の患者は、より全身性の症状、広範なすりガラス状病変、リンパ球減少、血小板減少のほか、CRPおよびLDHの増加を示した。
・30代の患者では、下痢のほか、咽頭痛、鼻詰まり、鼻漏などの上気道症状がみられた。
・point-of-care multiplex RT-PCRでは、6例とも既知の呼吸器病原性菌に対し陰性。SARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼ (RdRp)をエンコードするRT-PCRでは5例が陽性で、同ウイルス表面のスパイク状タンパク質を認め、サンガーシークエンス法により確定された。陰性の1例(患者3)は、武漢の病院への曝露という疫学的に強い関連があり、多発性のすりガラス状病変が確認されたため、感染症例とみなされた。
・患者2の血清サンプルのみが陽性であり、他のすべての患者の血清、尿、および糞便サンプルは、SARS-CoV-2について陰性であった。
・6例全員が隔離され、支持療法下で入院。2020年1月20日時点で病状は安定していた。
(ケアネット 遊佐 なつみ)