国内における多くの新型コロナウイルス感染症の患者を出したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。乗員・乗客で、症状はないもののPCR検査によりSARS-CoV-2感染が確認された人(無症状病原体保有者)および感染者との濃厚接触歴が確認された人(濃厚接触者)を受け入れた藤田医科大学病院岡崎医療センター(愛知県岡崎市)が3月13日、このうち90例について日本感染症学会ホームページで経過を報告した。それによると、3月6日夜の時点で、90例中87例において2回連続のPCR陰性が確認された。初めて陽性と確認された日から起算して、陰性化に要した日数の中央値は9日(四分位範囲:6~11日、範囲:3~20日)であった。
報告の主な内容は以下のとおり。
・当該施設へ感染者の受け入れは、2月18~26日に行われた。
・90例の年齢中央値は59.5歳(四分位範囲:36~68歳、範囲:9~77歳)で、男性53例(59%)、女性37例(41%)。
・入所後は1日2回の体温測定と酸素飽和度、自覚症状の確認のほか約48時間の間隔で鼻咽頭ぬぐい液を採取し、連続して2回のPCR陰性が確認されるまで検査を実施した。
・90例のうち、81例(90%)で陰性化に6日以上を要した。
・初回陽性確認日から6日目、7日目、8日目、9日目にPCR検査を行い、陰性化を確認できた累積割合は、それぞれ36%(32/90)、39%(35/90)、48%(43/90)、60%(54/90)だった。
・90例中18例(20%)において、1回陰性を確認後、再度陽性となる現象が見られた。
・90例中11例(12%)において、2回連続陰性が確認されるまでに15日以上を要した。
新型コロナウイルス感染症の無症状病原体保有者の退院の取扱いについて、厚生労働省は、陽性の確認から48時間後にPCR検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した12時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合に退院可能としている。しかし、本報告によれば、6日目までに陰性化した無症状病原体保有者は36%に留まっており、「陰性確認を行う場合の初回検査は、初回陽性PCRの検体採取日から数えて6日目以降に行い、これが陽性である場合は48時間後に再検するのが適切な可能性がある」としている。
また、本報告におけるクルーズ船上でのPCR検査は 2月13~22日に実施されており、「市中感染例などで濃厚接触後に迅速にPCR検査が行われ陽性だった場合の陰性化には、さらに日数を要する可能性もあると思われる」としている。
(ケアネット 鄭 優子)