悪液質は患者の身体的健康と生活の質に影響を及ぼし、さらにがん治療、とくに殺細胞性抗がん剤に対する患者の忍容性にも影響する。国立がん研究センター東病院の光永 修一氏らは、進行膵管腺がん(PDAC)患者を対象に悪液質について後ろ向きに調査し、1次化学療法開始後早期に悪液質が発現したものの、生命予後因子ではなかったことを明らかにした。ただし、1次化学療法開始後に悪液質が認められた患者では、認められなかった患者に比べ一部の有害事象の発現頻度が高い傾向にあったという。Supportive Care in Cancer誌オンライン版2020年2月26日号掲載の報告。
がん治療開始後の悪液質の発現は全生存期間とは関連しない
研究グループは、2008年6月6日~2017年3月31日にPDACと診断され1次化学療法を受けた患者を対象に、後ろ向きに解析した。
悪液質は、>5%の体重減少、またはBMI<20の患者では>2%の体重減少と定義し、1次化学療法開始前6ヵ月までに認められたものをベースライン悪液質、治療開始後の悪液質をフォローアップ悪液質とした。
進行膵管腺がん患者を対象に悪液質について調査した主な結果は以下のとおり。
・解析対象は150例(年齢中央値65歳、BMI中央値21.7)であった。
・ベースライン悪液質は、50%の患者に認められた。
・フォローアップ悪液質は、1次化学療法開始後12週以内に32%で発現し、治療開始後1年の時点では64%に達した。
・フォローアップ悪液質の発現は、全生存期間とは関連しなかった。
・フォローアップ悪液質なしの患者に比べフォローアップ悪液質ありの患者では、食欲不振、疲労、悪心および下痢が高頻度に認められた。
(ケアネット)