COVID-19治療薬「拙速な特例的承認」に懸念、日医有識者会議が緊急提言

提供元:ケアネット

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公開日:2020/05/21

 

 日本医師会COVID-19有識者会議は5月18日、「新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」と題し、有事といえども科学的根拠の不十分な候補薬を、治療薬として承認すべきでないとする旨の声明を発表した1)

 声明では、特別承認制度により5月7日付で国内初のCOVID-19治療薬となったレムデシビル(商品名:ベクルリー)の承認過程に言及。米国立衛生研究所アレルギー感染症研究所(NIH/NIAID)が主導し、日本からも登録参加した国際共同臨床試験(ACTT1試験)において、「周到な研究デザインのもとにレムデシビルの効果を証明」しており、「高いエビデンス・レベルでCOVID-19に対する有効性が確認された初めての薬剤」であると強調している。

 一方で、治療薬候補として現在複数の薬剤が検討されているが、「有事だからエビデンスが不十分でも良い、ということには断じてならない」と指摘。「COVID-19のように、重症化例の一方で自然軽快もある未知の疾患を対象とする場合には、症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要」と提言している。

 これに加え、著名人が既存薬の服用によりCOVID-19の症状が改善したことを公表したり、“有効”とされる既存薬の使用を巡って扇動的に報じたりするマスコミの姿勢にも疑問を呈し、「エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速に特例的な承認を行うことなく、十分な科学的エビデンスが得られるまで、臨床試験や適用外使用の枠組みで安全性に留意した投与を継続すべき」との見解を示している。

 COVID-19を巡っては、国内外で新規治療薬の研究・開発が進められる一方、国内では、新型・再興型インフルエンザ治療薬として2014年に承認されたファビピラビル(商品名:アビガン)を転用、COVID-19治療薬として月内にも早期承認を目指すことを政府が明言している。また、厚生労働省は5月12日付で、COVID-19に関する医薬品の承認審査の際、公的な研究事業により実施される研究の成果において医薬品等の一定の有効性および安全性が確認されている場合には、治験等の臨床試験成績の提出を承認後でも可とする旨の通知を出している2)

(ケアネット 鄭 優子)