新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療にあたる医療従事者の感染リスクと臨床的特徴について、中国・華中科技大学のXiaoquan Lai氏らが武漢の3次医療機関における約1万人の医療従事者を調査した。その結果、医療従事者の感染のほとんどがアウトブレークの初期に発生していた。また、これまでのウイルス感染症の流行時とは異なり、発熱外来や発熱病棟などで勤務する医療従事者に比べ、それ以外で勤務する医療従事者の感染率が高かった。著者らは、感染した可能性がある医療従事者を迅速に特定し、無症状者に対する定期的なスクリーニングを行うことで医療従事者を守ることができるとしている。JAMA Network Open誌2020年5月21日号に掲載。
医療従事者の感染率は発熱外来/発熱病棟で0.5%、それ以外は1.4%
本研究では、武漢のTongji Hospitalに勤務する医療従事者9,684人について、2020年1月1日~2月9日のCOVID-19発症者のデータを収集した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の曝露・疫学・人口統計に関する情報はアンケートから、臨床・検査・放射線学的な情報は電子記録から収集した。また、335人の医療従事者を無作為に抽出し、高リスクで無症状者における感染率を推定した。環境表面のサンプルも収集した。
医療従事者の感染リスクについて調査した主な結果は以下のとおり。
・9,684人の医療従事者のうち110人がSARS-CoV-2陽性で、感染率は1.1%であった。そのうち女性が70人(71.8%)、年齢中央値は36.5歳(四分位範囲:30.0〜47.0歳)、職種は看護師62人(56.4%)、医師26人(23.6%)、医療助手22人(20.0%)であった。
・発熱外来/発熱病棟で勤務する医療従事者の感染率は0.5%(3,110人中17人)、それ以外で勤務する医療従事者では1.4%(6,574人中93人)であった。
・発熱外来/発熱病棟以外で勤務する45歳未満の看護師は、45歳以上の発熱外来/発熱病棟で勤務する医師より感染率が高かった(感染率比:16.1、95%CI:7.1~36.3、p<0.001)。
・無症状者における感染率は、発熱外来/発熱病棟で勤務する医療従事者において0.74%(135人中1人)、それ以外で勤務する医療従事者で1.0%(200人中2人)であった。
・環境表面における90検体はすべて陰性であった。
・110人中93人(84.5%)の医療従事者が軽症~中等症で、1人(0.9%)が死亡した。
・主な症状は、発熱(60.9%)、筋肉痛/倦怠感(60.0%)、咳嗽(56.4%)、咽頭痛(50.0%)、筋肉痛(45.5%)であった。
・医療従事者の主な感染経路は、患者(59.1%)、同僚(10.9%)、家族や友人(12.7%)であった。
(ケアネット 金沢 浩子)