内分泌療法感受性のホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、CDK4/6阻害薬パルボシクリブ+アロマターゼ阻害薬レトロゾールの併用療法が標準治療として使われている(PALOMA-1、PALOMA-2試験)。一方、抗エストロゲン薬フルベストラントは、同患者に対しアナストロゾールに優れることが確認されている(FALCON試験)。また、内分泌療法後に進行した患者に対して、パルボシクリブ+フルベストラント併用が生存にベネフィットをもたらしている(PALOMA-3試験)。これらを受け、同患者に対するパルボシクリブ併用療法において、フルベストラントとレトロゾールを比較する第II相PARSIFAL試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)でスペイン・University Hospital Arnau de VilanovaのAntonio Llombart-Cussac氏が発表した。
・対象:進行乳がんに対する全身治療歴のない、閉経後/閉経前、内分泌療法感受性(内分泌療法歴なし、または内分泌療法終了後12ヵ月以上での再発)のHR+/HER2-進行乳がん患者 486例
・試験群:パルボシクリブ(125mg/日を3週経口投与、1週休薬)+フルベストラント(500mg/日を1、14、29日目に筋肉内投与、その後は1月おきに投与)243例
・対照群:パルボシクリブ+レトロゾール(2.5mg/日を経口投与)243例
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師の評価による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]PFSの事前に規定されたサブグループ解析、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性
主な結果は以下のとおり。
・2020年3月9日までに、256例のPFSイベントが発生した。
・ベースライン特性は両群でバランスが取れており、年齢中央値は63歳(範囲:25~90)、56.6%がECOG PS 0、40.7%が「de novo」転移を有し、47.9%が内臓転移、43.6%が3臓器以上に転移を有していた。
・追跡期間中央値32ヵ月におけるPFS中央値は、フルベストラント群27.9ヵ月に対し、レトロゾール群32.8ヵ月(ハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:0.89~1.45、p=0.321)で有意差は認められず、優越性は示されなかった。また、あらかじめ設定された非劣性マージン1.21が95%CIに含まれ(0.89<1.21<1.45)、非劣性も示されなかった。
・内臓転移を有する患者におけるPFS中央値は、フルベストラント群17.9ヵ月 vs. レトロゾール群25.6ヵ月(HR:1.27、95%CI:0.91~1.77、p=0.143)。内臓転移のない患者におけるPFS中央値は、36.6ヵ月 vs.35.9ヵ月(HR:0.97、95%CI:0.67~1.40、p = 0.871)となり、有意差はみられなかった(交互作用のp=0.275)。
・再発患者におけるPFS中央値は、27.7ヵ月 vs.32.9ヵ月(HR:1.14、95%CI:0.82~1.56、p=0.425)。「de novo」転移を有する患者におけるPFS中央値は、28.1ヵ月 vs.31.6ヵ月(HR:1.13、95%CI:0.77~1.75、p = 0.53)となり、有意差はみられなかった(交互作用のp=0.979)。
・3年OS率は79.4% vs.77.1%(HR:1、95%CI:0.68~1.48、p=0.986)。
・ORRは46.5% vs.50.2%(p= 0.414)、CBRは70.8% vs.69.1%(p=0.692)とともに差はみられなかった。
・Grade 3以上の有害事象の発現は両群で類似しており、好中球減少症と白血球減少症が最も多かった。
研究者らは、パルボシクリブとの併用において、フルベストラントとレトロゾールの間に差はみられず、最終的な治療法の決定は、患者と医師が、その優先事項やその後の治療戦略のバランスをとって決めていく必要があるとまとめている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)