新型コロナウイルスへの感染を調べる検査について、厚生労働省は7月17日より、無症状者に対しても、唾液を用いたPCR検査(LAMP法含む)および抗原定量検査※を活用可能とすることを発表した1)。ただし、簡易キットによる抗原検査については今後研究を進める予定で、現状唾液検体の活用は認められていない。これまで、PCR検査、抗原定量検査ともに唾液検体については、発症から9日目以内の有症状者のみ活用が認められていた。
※6月25日保険適用。簡易キットよりも感度が高いが、専用の測定機器が必要2)。
今回の決定は、都内で無症状者を対象に、唾液を用いたPCR検査および抗原定量検査と、鼻咽頭拭い液PCR検査結果を比較し、高い一致率を確認したことを受け3)、7月15日開催の第44回厚生科学審議会感染症部会の審議を経て、活用可能と判断されたことに基づく。
同部会では、「研究結果および感染管理の観点から、無症状者に対し、現状の鼻咽頭検体に加えて、唾液検体を用いることは可能と考える」と結論づけたうえで、「一般的に検査について感度・特異度ともに 100%でない以上、これまでと同様に陰性であっても、感染していないことの証明にはならない点に留意が必要であることを被験者に十分説明し、被験者の検査後の行動に留意を求めていくことが必要」とまとめている4)。
唾液を用いたPCR検査と鼻咽頭ぬぐい液の比較結果
唾液を用いたPCR検査およびLAMP法検査について、鼻咽頭ぬぐい液を用いたPCR検査と比較した結果、90%程度の陽性者一致率・陰性者一致率ならびに一致率が確認された:
(鼻咽頭ぬぐい液を用いたPCR検査結果との)陽性者一致率
唾液を用いたPCR検査:91.9%
唾液を用いたLAMP検査:86.5%
陰性者一致率
唾液を用いたPCR検査:88.9%
唾液を用いたLAMP検査:92.6%
一致率
唾液を用いたPCR検査:90.1%
唾液を用いたLAMP検査:90.1%
なお、鼻咽頭ぬぐい液PCR検査で陽性であり、唾液PCRまたは唾液LAMP検査で陰性となった症例については、いずれも、検査時点で鼻咽頭ぬぐい液中のウイルス量はきわめて少ないことが確認された(Ct値が39以上)。他方、鼻咽頭ぬぐい液PCR検査で陰性にもかかわらず、唾液PCRまたは唾液LAMP検査で陽性となった症例ではいずれも、検査時点での唾液中のウイルス量は少ないことが確認された(Ct値が33以上)。
唾液を用いた抗原定量検査と鼻咽頭ぬぐい液の比較結果
唾液を用いた抗原定量検査について、鼻咽頭ぬぐい液を用いたPCR検査と比較した結果、陽性者一致率は約76%、陰性者一致率は100%、一致率は約90%であった。なお、鼻咽頭ぬぐい液PCR検査で陽性であり、唾液抗原定量検査で陰性となった症例(9例)のうち、鼻咽頭ぬぐい液では9例中7例、唾液では全例について検査時点でのウイルス量が少ないことが確認された(Ct値が34以上)。
(ケアネット 遊佐 なつみ)