マサチューセッツ州最大の医療システムで12の病院と75,000人超の従業員を抱えるMass General Brigham(MGB)は、2020年3月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、医療従事者(HCW:health care workers )のCOVID-19の前兆に対する体系的な検査やサージカルマスクを着用した全HCWと患者に対してユニバーサルマスキングを含む多面的な感染対策の研究を実施した。その結果、MGBでのHCWのマスク着用習慣がHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性率の有意な低下に関連していたと示唆された。また、患者-HCWおよびHCW同士の感染率低下に寄与する可能性も明らかになった。JAMA誌2020年7月14日号リサーチレターでの報告。
研究者らはマスク着用の病院方針とHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率との関連性を評価するため、2020年3月1日~4月30日の期間にPCR検査を受けた患者に対して直接的または間接的ケアを行ったHCWを特定した。
1)HCWのユニバーサルマスキング実施前期間(2020年3月1〜24日)
2)患者のユニバーサルマスキング実施移行期間(2020年3月25日〜4月5日)と症状発現が認められた際の追加期間(2020年4月6〜10日)
3)ユニバーサルマスキング介入期間(2020年4月11〜30日)
陽性率は全HCWの最初の検査結果での陽性を分子とし、検査2回目以降での陽性は除外した。分母には検査を一度も行っていないHCWとその日に検査を行ったHCWが含まれた。解析には重み付き非線形回帰分析を使用した。
主な結果は以下のとおり。
・HCW:9,850人のうち、1,271人(12.9%)がSARS-CoV-2陽性だった。
・陽性者の年齢中央値は39歳、73%は女性だった。また、陽性者の職種内訳は、医師・研修医(7.4%)、看護師・医師助手(26.5%)、医療技術者・看護助手(17.8%)、その他(48.3%)だった。
・介入前のSARS-CoV-2陽性率は、0%から21.32%と指数関数的に増加し、加重平均は1日あたり1.16%増加、倍加時間( Doubling Time) は3.6日だった(95%信頼区間[CI]:3.0~4.5)。
・介入期間中の陽性率は14.65%から11.46%に直線的に減少し、加重平均は1日あたり0.49%減少した。また、 slope の傾きは1.65%変化し(95%CI:1.13~2.15%、p<0.001 )、介入前と比較して、1日あたり大きく減少した。
(ケアネット 土井 舞子)